太原市内のタクシーは全て国産BYD社製のEV（電気自動車）

　端午節の連休を利用して山西省の省都・太原を訪れました。これまで太原へは2007年に内モンゴルの包頭に行く際、乗り継ぎのために空港に寄ったのみ。当時、飛行機の上から眺めた延々と連なる草木の生えていない岩山が強く印象に残っていました。

　石炭の産出が有名な場所でもあります。石炭景気で一時は盛り上がった消費も、昨今の大気汚染による石炭需要の急減やぜいたく禁止令などの影響か、ルイ・ヴィトンが撤退するなど高額消費を中心に影響が出ているようです。今回の視察ではこうした景気動向が地元の消費現場にどう影響しているのかについて興味がありました。

　太原に到着してまず面食らったのが、意外と空気がきれいだったこと。劣悪な大気状況を覚悟していたのですが、季節にもよるとは思うものの、昼間は透き通る青空、夜は星がくっきり見えるほどです。スマホアプリでもPM2.５の値は50前後と低い数値を示していたのですが、なぜか初日は街中を歩いていると目に何かが沁みてショボショボしたのは気になりました。

　市内のタクシーは全て国産BYD社製のEV（電気自動車）。また、市内の至る所に公共のレンタサイクルが数多く設置されており、実際の利用者も含め、これまで見てきた都市の中でもダントツの充実度でした。石炭採掘の減少と共に、こうした努力が大気改善に結びついているのかもしれません。

　気になっていた消費現場については、あまり芳しくないように見受けられました。端午節の連休にもかかわらず、百貨店やモールなどの商業施設に客が殺到している光景をほとんど見かけませんでした。モール内の飲食フロアや街中の昔ながらの建物が残る美食街などは多くの客で賑わっていましたが、アパレルやブランドショップ、スーパーなどは客足が鈍く、販売スタッフの数の方が目立つほどです。

「千朝浪嶼水世界」は華北最大のプール遊園地

　一方、太原から南に約80kmの場所に、清朝時代の晋商（山西商人）の大富豪の大邸宅が残る「喬家大院」という観光地があるのですが、そのすぐそばに2015年にオープンした「千朝浪嶼水世界」という巨大プール遊園地には、数え切れないほどの車と入場待ちの客を目にしました。市内から車で1時間以上もかかる場所ながら目を見張るほどの集客力を持つ娯楽施設を前に、太原でも「モノ」から「コト」へと消費ニーズが変化しているトレンドを垣間見た気がしました。（※太原の商圏や商業施設の状況についてはまた来週のメルマガでお伝えします。）

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