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【第524回】 見事な“すき間(ニッチ)”戦略で一気に市場を席巻

無糖フレーバー炭酸水トップブランド「元気森林」

2022年6月15日更新

中国で今や無糖フレーバー入り炭酸水の代名詞的存在となった「元気森林」
 中国で今や無糖フレーバー入り炭酸水の代名詞的存在となった「元気森林」。創業者の唐彬森氏は、飲料業界での経験はゼロ。2014年に「挑戦者資本(チャレンジャー・キャピタル)」という投資会社を設立した投資家で、炭酸水市場に勝機ありと踏んで2016年に元気森林を設立しました。

 「0糖0脂0卡」(ゼロシュガー、ゼロファット、ゼロカロリー)をキャッチフレーズに、今や双11(ダブルイレブン)など大型のネットセールでは飲料部門の取引額トップの常連になるまで急成長を遂げました。2021年通年の売上は70億元に達しています。

 元気森林の成功は、徹底したマーケティング戦略の賜物といっても過言ではないでしょう。そのなかでも特に、元気森林が掲げる「ゼロシュガー、ゼロファット、ゼロカロリー」というコンセプトが、時代のニーズにぴったりとタイミングよく合致しました。

 人々の生活が豊かになるにつれ、高まりつつあった健康志向に着目。多くの人が「健康的でダイエットにも役立つ」美味しい食品を求めるようになるなか、飲料もブランドより成分のほうを重視するようになりました。中国調査会社・中商産業研究院によると、中国消費者の80%が食品や飲料の成分に注目。なかでも飲料の糖分を気にする人が増えているとレポートしています。

 またニッチ戦略にも目を見張るものがあります。中国の飲料市場を眺めると、炭酸飲料はコカ・コーラやペプシ、茶飲料は康師傅や統一、ボトルウォーターは農夫山泉など、それぞれ大手メーカーが大きなシェアを占めています。一方、唯一炭酸水だけは、大手ブランドが存在しないことに着目した元気森林は、このジャンルで勝負に出ました。

 元気森林の主要ターゲット層は、1995~2009年生まれの若いZ世代です。この世代の若者は、健康やエコロジー、低糖、低カロリー、低脂肪にこだわる傾向があり、美味しくて健康的という元気森林のポジショニングが、Z世代のニーズにぴったりマッチしました。また若者の多様な消費ニーズに応えるべく、SKUを増加。無糖フレーバー炭酸水をメインとしながら、ミルクティーや茶飲料、機能性飲料など多くのタイプの飲料を発売しています。

 販売チャネルは、オンラインとコンビニチャネルを選択。前者に関しては、飲料メーカー大手各社がオフラインチャネルで圧倒的な勢力を誇る一方で、オンラインは規模の経済性を活かしきれていない点に着目しました。

 そこでまずはオンラインチャネルでシェアを上げることに注力。現在、コカ・コーラの天猫フォロワー数は117万人、康師傅111万人、ペプシ101万人、農夫山泉220万人で、4社を合計しても、元気森林のフォロワー数857万人に及ばないほど、オンラインでの取り組みに圧倒的な差をつけています。

 一方、オフラインでは、大手が強みを握っているスーパーマーケットチャネルでの正面対決を避け、コンビニチャネルに絞って販売を展開しました。2022年4月時点で、中国国内800都市をカパーし、小売店100万箇所以上で販売しています。ディストリビューターの数も昨年初の500社から1,000社を超え、オフラインでの展開を積極化。現在オフラインの販売比率が全体の9割に達しているようです。

「0糖0脂0卡」(ゼロシュガー、ゼロファット、ゼロカロリー)をキャッチフレーズに
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