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網紅の仕組みから生み出し方まで徹底分析(3)
「国潮(国産)」ブームに便乗 網紅で“2度目の春”を謳歌
2020年11月20日
「国潮(国産)」ブームに便乗
網紅で“2度目の春”を謳歌

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潤百顔とコラボした「故宫文創」の口紅
  多くの老舗ブランドがブランドイメージの劣化だけでなく、ネットなど新しい販売チャネルへの適応不足などの理由から、淘汰の危機に瀕している。一方でこれまでの良さを生かしつつ、新たな活力を導入することで網紅(ワンホン)として生まれ変わり、二度目の春を迎えているブランドも存在する。

  老舗ブランドの復活で多く目にするのが、他ブランドとのコラボレーションだ。最近の「国潮(国産ブーム)」トレンドに乗って生まれた「大白兔奶糖(中国版ミルキー)」の香水(香水ブランド「気味図書館」とのコラボ)、「故宫文創(故宮のデザインを模した文房具など)」の口紅(コスメブランド「潤百顔」とのコラボ)、虫よけの「六神花露水」味のカクテル(カクテル飲料「Rio」とのコラボ)などは、業界を跨いだコラボがSNS上で大きな話題を呼んだ。

  コラボ商品の多くは限定品で、長期間販売されるわけではない。にもかかわらず、コラボがブランドの起死回生のきっかけとなり、消費者からの注目と好感度の回復に大きく寄与する例は少なくない。

  上海発で86年の歴史を誇る化粧品ブランド「百雀羚(Pechoin)」は、老舗ブランドが網紅に化けた代表例だ。中国産コスメブランドとして長い歴史を誇る同社は、マーケティング面でも芸能人の起用やテレビ広告、バラエティ番組の冠スポンサーなど従来型の手法を主体としてきた。しかし2016年頃から方針をガラッと転換し、「網紅化」に着手しはじめた。

老舗から網紅コスメへ
網紅で復活の「百雀羚」

  2016年、百雀羚はSNS(ソーシャルメディア)上で大規模なプロモーションを開始。若者消費者から注目を集め始めた。

  従来からの「植物由来」のイメージを基調に、ミニブログの微博(ウェイボ)の科学系ブロガー「@博物雑誌」と提携。文艺ムードの広告や記事で構成される「#(ハッシュタグ)花YOUNG百出」を展開し、国産ブランドの安っぽいイメージを一新することに成功した。

  2017年には、総勢36名のメイクの達人や人気ブロガーと契約し、SNS上で大々的に露出を強めた。直播(実況動画)サイトでは芸能人を使ったプロモーションも展開。男性歌手の華晨宇がコスメ専門の特売サイト「聚美(JUMEI.COM)」で行った実況動画は、最高時で500万人が視聴した。

  なかでも注目に値するのはパロディ広告の拡散効果だろう。2016年11月11日の「双11(独身の日)」セール中、中国古代の四大美女を用いたパロディ広告を展開。多くのネットユーザーがこれに注目し、拡散した。結果的に同社のEC旗艦店の売上は1.45億元を記録。化粧品ブランドのランキングでトップに躍り出た。

  2017年には長さ4.6メートルに及ぶ「1931長図広告」をネット上で展開。同年のSNSマーケティングの典型的成功例となった。

  広告にはチャイナドレス、スパイ戦、洋行、裁縫店などオールド上海ムード満載のイラストが描かれ、消費者が百雀羚に持つレトロなイメージをそのまま再現。その斬新さはネット上で大きな話題を呼んだ。

  いくつかの微信(ウィーチャット)の情報メディア系の公式アカウント(公衆号)上で公開されたのみだったにもかかわらず、多くの人がこれをシェアやコメントし、1週間弱で閲覧回数は3,000万回に達した。この広告により、百雀羚の網紅としての地位が確立されたといっても過言ではない。

  その後も「三生花」、「美人很忙(美人は忙しい)」、「三生三世」、「韓梅梅快跑(逃げろ!韓梅梅)」など様々なテーマの広告を展開。いずれも高い評価を得ている。

  網紅に成長した百雀羚の売上は、2012年の18億元から、16年には138億元、17年177億元、18年230億元とV字回復に成功。2019年の「双11」セールの売上は8億元に達し、5年連続で国産コスメブランドのトップに立った。

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