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網紅の仕組みから生み出し方まで徹底分析(12)
いかに網紅店を生み出すか?
2020年12月7日
いかに網紅店を生み出すか?

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グルメ系の情報公式アカウント「上海去哪吃」
「喜茶(HEYTEA)」、「阿大葱油餅」、「桃園眷村」など、SNS(ソーシャルメディア)の効果に後押しされて、次々と誕生する網紅(ワンホン)ブランド。では、どうしたら網紅を生み出すことができるのか?SNSマーケティングの専門家は以下のステップと方向性を提唱している。

  まず軸となるのは、「オンラインで集客→オフラインで消費→継続して育成→網紅店」という流れだ

  活用できるメディアとしてはショート動画投稿アプリの抖音(ドウイン・TikTok)」、微信(ウィーチャット)の公式アカウント(公衆号)とモーメンツ(朋友圏)、微博(ウェイボ)、ウェブサイト、テーマごとの掲示板サイトなど。

  使用するツールは文章広告、商品画像、動画、ポスター、宣伝用ウェブページ、クーポンなどがある。

  以下では、網紅になるためのステップを「短期」、「中期」、「長期」に分けて解説していく。

(1)短期:流れづくり

  準備段階として、まず「セールスポイント」を考察する。一般に動画でシェアしやすい内容がふさわしい。

  例えば四川火鍋レストランチェーンの「海底捞」の場合、ウリとなるのはサービスの良さ。喜茶なら、店頭に並ぶ客の行列だろう。トルコアイスはその伸び伸びのユニークさがポイントだ。

  友達に網紅店をシェアする際にキーワードが付加されるので、このキーワードの付け方も重要だ。

  セールスポイントを決めたら、次は集客までの「流れ」づくりに移る。数あるSNSのなかで、この流れづくりに最も効果が期待できるのが微信(ウィーチャット)の公式アカウント(公衆号)だ。ユーザー層が安定的でコントロールしやすいためだ。

  レストランなど飲食店の場合、グルメ関連の情報メディア系の公式アカウントに広告を投入することで、ターゲット消費者にアピールできる。例えば、深圳の生活関連アカウントは大小合わせて数十個存在するが、それぞれのトップ広告の価格はフォロワー数をベースに500~5万元程度に設定されている。

  またこうした宣伝の際に、集客が目的であればプロモーション(販促)とセットにするのが望ましい。商品を露出するだけでは、期待するほどの集客効果を望めない恐れがあるからだ。

  ショート動画投稿アプリの抖音(ドウイン)は、集客効果が読みづらい反面、低コストで爆発的な人気商品を生み出す可能性に秘めた媒体でもある。商品のウリや特徴にズームしたユニークな動画で人気に火が付けば、数万単位で再生される可能性もあり、想定以上の集客効果も期待できる。

  しかしこうした突発的で他力本願的な人気に頼らず、地道に戦略的に情報や動画を発信し続けることが成功への一番の近道だ。セールスポイントをなるべくたくさんピックアップし、網紅(インフルエンサー)と提携しながら、より多くの動画を配信して露出を保つことが重要だ。そのための数千元程度の費用なら、地方の網紅ブランドでも充分負担可能な金額だろう。

(2)中期:持続性

  集客までの流れができたら、続いて鍵となるのが「持続性」だ。大人気の網紅店が1年もせずに閉店していたというケースも少なくない。これは商品自体よりは、露出や企業努力の継続性の問題のほうに依拠している。

  このステージでの露出に最適なツールは、やはり抖音だろう。抖音の動画推薦(オススメ)機能はフォロワーの数ではなく、投稿動画のクオリティやユーザーの閲覧履歴で決められる仕組みだ。面白くてユーザーに好まれる動画なら、自然に多く表示される可能性が高い。

  これは露出がフォロワー数に左右される微博(ウェイボ)よりも優れた特徴といえる。定期的に店舗や商品に関する情報をより多くの人に届けたいのであれば、抖音で工夫しながら動画を作成し、投稿していくとよいだろう。

  動画等で露出させるペースは1日に動画2~3件、毎週2~3日程度が望ましい。その後、実際の効果や反応を見ながら、2週間から1ヶ月継続する。
話題が“発酵”する(注目される)までには1週間前後、場合によってはもっとかかることが通例だ。今日配信した動画が、明日必ず大人気となるわけではない。

  また露出の方法として、商品の評価なども取り入れるのがよいだろう。例えばグルメ評論家の評価などは、その後の宣伝材料にもなりうるからだ。

(3)長期:企業イメージの発信

  長期に渡る宣伝の展開にふさわしいのはウェブサイトだ。例えば、喜茶をより深く知りたい思う消費者や業界関係者は、関連業界のウェブサイトで情報を得ようとする。

  「喜茶はなぜ人気なのか?」、「喜茶の行列の理由は?」、「喜茶今昔」などといった文章は、喜茶をより深く理解するのに役立っている。エンタメ志向ではなく、権威あるコンテンツをポータルサイトや地域性のウェブサイト、起業関連のサイトなどで展開するのもよいだろう。企業背景などを語れば、間接的にブランド露出も継続できる。

  この段階になると、露出の対象先は主にベンチャーキャピタルなどだろう。融資やフランチャイズの勧誘などはその一例だ。より多くの人に認知され、網紅(ワンホン)店になれば、フランチャイザーも興味を持つだろうし、融資の打診も増えてくるだろう。

  例えば、茶飲料チェーンの「答案茶(ANSWER TEA)」は、網紅(ネットで話題)となった後、瞬く間に全国でフランチャイズ展開を実現している。

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