スマホ版TV通販「ライブコマース」がECの主役に
天猫「双11」セールのライブコマースイベント |
ここ数年、スマートフォン(スマホ)で手軽に撮影と配信が可能となったライブ中継動画(ライブストリーミング)。中国で「直播」と呼ばれるライブ動画は、2016年ごろに若者を中心に流行した。
当初は、“キレイ”な女性や“イケメン”男性がスマホの前でおしゃべりや歌を歌い、フォロワーが「投げ銭(紅包)」やバーチャルギフトを贈るといったやり取りが話題となった。誰もがネット上で“アイドル”になりうるチャンスありとのことで、多くの若者が直播市場を盛り上げた。
その後、こうした単なるメディア的用途から、他の業種と結びつきながら、様々な発展を遂げてきた。「ライブ動画+Eコマース」、「ライブ動画+旅行」、「ライブ動画+スポーツ」、「ライブ動画+バラエティ」、「ライブ動画+ゲーム」などだ。このように「ライブ動画+」の機能が付加されたコンテンツが、各プラットフォームで試験的に掲載されるようになった。
なかでもネット通販と結びつけた「ライブ動画+Eコマース(以下、ライブコマース)」は、瞬く間に消費者に受け入れられ、今や多くの企業やショップが最も重視する販売チャネルの1つとなっている。
ライブコマースの成長性に関心が高まった2019年以降、多くの企業がライブコマースの事業化に乗り出した。淘宝(タオバオ)、京東(JDドットコム)、拼多多(ピンドウドウ)などEC(電子商取引)プラットフォーム大手各社のほか、動画投稿アプリの抖音(ドウイン・TikTok)や快手(クアイショウ)なども続々と参入した。
ライブコマースの先駆者的存在なのが淘宝(タオバオ)の「淘宝直播(ライブコマース)」だ。2016年に運営を開始。アリババによると、3年連続で前年比150%以上の成長を続けているという。
2019年11月11日(独身の日)の天猫「双11」ネットセールでは、参加店全体の半数以上がライブコマースを実施。淘宝直播の取引額は1日(24時間)で200億元近くに達した。
取引額が1億元を超えたライブルーム(直播間 ※ライブ動画配信主)が10個以上、1,000万元を超えたところは100個を超えた。2019年1年間の淘宝直播の流通取引総額(GMV)は、2,000億元に達したもようだ。
2020年に入り、中国で爆発的に感染拡大した新型コロナウイルスにより、ライブコマースの成長はさらに突出したものとなった。消費者は外出を制限される一方、リアル店舗は業態転換を余儀なくされた。
こうして、ライブ動画を視聴しながら買物をするという新たな消費スタイルが、中国全土に広く定着することとなった。