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中国ブランド力指数から見るローカライズの重要性
若者向けファミレス化した中国吉野家に「敬服」
2012年2月29日

 吉野家
  2012年2月25日付けの日本経済新聞電子版で「日本ブランド、中国で影薄く 152商品で首位3品」という記事を目にしました。中国工業信息部傘下の中国企業ブランド研究センターが、大衆向け商品152品目を対象に、それぞれの分野で最も支持されているブランドを調査しまとめた「2012年中国ブランド力指数(C-BPI)」を発表し、またこの調査は2011年10月から2012年1月まで実施され、主要30都市の1万3500人(15~60歳)が対象でした。これによると、152品目のうち104品目で中国企業が首位となっていました。海外企業は48品目で首位でしたが、内訳は、アメリカが23、イギリスが7、韓国が5・・・と続きます。日本企業は魔法瓶のタイガー、ビデオカメラのソニー、デジタルカメラのキヤノンの3社のみで、「高級品を中心に富裕層には大きな影響力を持つが、食品など大衆向け商品では存在感が希薄である傾向を示した」と若干悲観的な記事となっていました。

  確かにランキングで、かつ首位だけを見ると日本ブランドの影の薄さが目についてしまうかも知れませんが、実際に同レポートをネットからダウンロードして見ると、筆者は逆に前向きな印象を持ちました。

  たとえば、このコラムの第1回で取り上げた「TOTO」。周りの中国人に「知っているトイレ用品メーカーは?」と尋ねたところほとんどがTOTOと回答していましたが、同レポートではアメリカのKOHLER社には及ばなかったものの見事第2位にランクインされています。そのほかに生理用品部門でユニチャームのソフィ、腕時計ではカシオ、SUV(スポーツ用多目的車)ではホンダ、タイヤではブリヂストンがそれぞれ第2位にランクインされています。

  特に驚いたのが中式ファーストフードチェーン店部門で吉野家が第3位に入っていたことです。そもそも「中式」にカテゴライズされていることにびっくりしましたが、並み居る競合他社を抑えて見事第3位に入ったのは立派です。吉野家は1992年に中国北京で第1号店をオープンし、2011年末時点で中国全土に300以上の店舗があります。中国では日本とは異なるメニューをたくさん揃え、中国人の好みやニーズに合わせ、牛丼以外にカレーやラーメン、コーヒーなどもメニューにあり、まるで若者向けのファミリーレストランのようになっています。

  ここでふと思い出したのが、カルフールのバイヤーにヒアリングしたときのこと。「日本商品は人気ありますか?」と聞いたところ、「確かにグリコやヤクルトなどは日本ブランドかもしれないけど、消費者はだれもそれらを“日本”ブランドとは思わず、中国のブランドと思って買っていると思いますよ」とコメントしていました。いわゆる“日本”のブランドとして認識されることも大事ですが、吉野家含め“中国”のブランドとして中国人に支持されるよう徹底したローカライズをすることが大事で、そういう意味では、日本企業の中国ローカライズブランドランキングといったレポートのほうが日本企業にとってはより参考になるような気がしました。

  なお、同レポートについては今後「2012年中国ブランド力ランキング」のテーマで分野別に解説していきますので、ぜひともご参考に。

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