中国では食べ歩きならぬ「歩き食べ(歩きながら食事をとる)」が非常にポピュラーで、朝の出勤風景ではホワイトカラー族がテイクアウトした朝食を頬張りながら先を急ぐ姿をよく目にします。こうしたテイクアウト市場を支えるのは、街頭の屋台やリヤカー、小型路面店のテイクアウトショップ、あるいはコンビニなどです。マクドナルドも近年、甜品站(スイーツスタンド)の併設を開始しましたし、上海の街角では「鳥の唐揚げショップ」が急増しています。
このテイクアウト市場で茶飲料のチェーン展開を図り、近年大人気となっているのが快楽檸檬(ハッピーレモン)です。現在、中国大陸を中心に約150店舗を運営しています。同ブランドは、「安心・安全」「健康・天然素材」「豊富なメニュー」などをブランドコンセプトに掲げ、若い女性をターゲットにイメージキャラクター「檸檬妹妹」を開発、同キャラクターを活用し、商品や店頭で「かわいい」「楽しい」を前面に打ち出しています。出店先に徹底的にこだわりながら直営展開を進めており、上海では来福士百貨店や久光百貨店、環球金融中心など、高級商業施設や高級オフィスビルに出店しています。
商品展開は非常にバラエティー豊富で、「健康レモン」「岩塩チーズ」「ムース」「ミルクティー」「緑茶」「スペシャルドリンク」「コーヒー」の7シリーズから構成され、全部で50種類近くあります。商品開発スピードが速く、上海と台湾に商品開発センターを置き、2カ月に1回、新商品を投入しています。各都市で味覚が違うことから、それぞれの好みを意識した商品を開発しているそうです。
中国大陸で毒ミルク事件など、食への安全・安心が脅かされるなか、ほとんどの食材を海外から輸入し、香港のSGS(スイスに本部をおく世界最大級の検査及び審査登録機関)で検査を実施しています。ヨーグルト風味の商品にはヤクルトを使用、牛乳はネスレ製品を採用、コップはすべて台湾製という徹底ぶりです。こうした安全・安心へのこだわりを、店頭のモニターなどで消費者に発信しています。
快楽檸檬は、安心・安全やキャラクターの活用など、本来日本の企業が得意とする部分を打ち出し、成功しています。日本でも横浜の中華街でテイクアウト式の焼き小龍包が人気とのこと。今後、テイクアウト業態で成功する日本ブランドが出てくることを期待します。