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「民族系体育用品」の不調の背景は?
差別化できず共倒れ状態のスポーツブランド
2012年11月16日

 中国系スポーツメーカーが経営の曲がり角を迎えているようだ。北京オリンピックやスポーツブームなどをきっかけに規模の拡大を進めてきたが、ブランドの独自性の欠如やアパレルブランドの攻勢などを受けて、各社は店舗閉鎖と在庫増に苦しんでいる。

 中国の民族系スポーツブランドといえば、五輪の体操金メダリストが率いる李寧(リーニン)、スポーツシューズで有名な安踏(アンタ)を筆頭に、特歩、361度、匹克(ピーク)、動向などが挙げられる。中国の各都市のショッピングストリートを歩けば、これらのブランド店を必ずといっていいほど見かけることができ、ショッピングモールや百貨店にも多くテナント入居している。

 しかし、その経営状況は芳しくないようだ。バスケットボールやテニス関連製品が中心の匹克は店舗数を縮小中だ。2012年9月30日時点で6739店舗を展開中だが、これは前年末比で1067店減少した数字。13年第2四半期向けの受注状況も価格ベースで前年同期比20~30%低下しており、12年12月期での業績も大幅減益見通しを出している。同社の許志華CEOは「業界の調整という観点からは、閉店は淘汰の過程」とあきらめ顔だ。このほか、李寧は12年上半期に248店をオープンしたが、一方で不採算店を中心に1200店を閉鎖した。同年6月末時点での店舗数は7303店。安踏は12年に入って110店舗の閉鎖に踏み切った。

 上述6社の在庫総額は12年6月末時点で37億2100万元に上る。11年末時点の36億9900万元からわずかではあるが在庫が膨らんだ。特に匹克の在庫額は5億2900万元に上り、前年末比で25.65%増加した。

 中国では2008年の北京オリンピックを契機にスポーツ用品の人気が高まり、各メーカーは各種スポーツ団体や大会などのスポンサーに名乗りを挙げた。香港市場への株式上場も相次いだ。各社はフランチャイズ店などを活用して店舗網を広げ、スケールメリットの拡大に注力していった。しかし、人件費や家賃などコストの上昇に加え、他ブランドとの差別化が進まず、各社共倒れの様相を見せている。

 この現状を脱却するためには何が必要だろうか。専門家は、これまで疎かにしてきた自社ブランドの立ち位置を今一度確認する必要があると指摘する。各スポーツブランドはファッション性や機能性を訴求してきたものの、飛び抜けた独自性は打ち出せず、圧倒的なブランド力を育ててきたわけでもない。他社との差別化を打ち出すことに失敗しているのだ。しかも、ナイキやアディダスなど国際的ブランドとの全面対決を避ける傾向にあり、それゆえ市場開拓余地が大きい二~三線級の地方都市への進出が増えていった。結果、これらの地方都市には見た目が同じような民族系スポーツブランド店が集中することになり、ますます差別化が難しくなる。

 また、中国では特に若者を中心に、スポーツウェアやシューズを普段からカジュアルな服として身に付ける傾向が強かったが、ファストファッションなど本家カジュアルブランドの進出と共に、市場のパイが食われてしまった。ネットショッピング市場が拡大し、安価でファッショナブルなアパレル品が人気を博してきたという状況もあった。

 中国のスポーツブランドは、これまでの規模の拡大のみを追及する市場戦略を改める時期に来ているのだろう。商品ラインアップの細分化、販売チャネルの研究、付加価値サービスの構築などを通じ、消費者重視の姿勢をより強めていく必要がある。規模が「大きい」だけでなく、単店舗あたりの収益力が高いなどの「強さ」を求めていくことが肝要だろう。これは中国系企業のみならず、日系企業にも言えること。綿密なマーケティングを行うことにより、商品やブランドの強みや市場でのニーズが見えてくるからである。

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