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中国人の顕著な海外ブランド志向
中国ブランドはスルーされる運命?
2013年1月11日

 地元ブランドに目向きもしない中国人消費者がますます増えている。元々根強い海外ブランド志向や海外旅行ブーム、人民元レートの上昇などが重なり、中間層から富裕層の間で特のその傾向が強い。中国人のぜいたく品消費のうち、実に6割が海外での購入によるものだったというデータもある。中国にはなかなか入ってこない海外製ブランド品を手に入れることがステータスにもなりつつある。

 中国の高級腕時計ブランド、海鴎表(シーガル)が2010年に発売した168万元の製品は、これまでわずか2本しか売れていない。高価格がその背景にあるが、これが海外の著名ブランドだったら結果は違っていたかもしれない。「グローバルラグジュアリーレポート」誌による11年の調査では、中国人消費者の86%が「中国製造と書かれている製品は買わない」という結果が出た。「中国製」や「中国ブランド」を当の中国人自身が敬遠する傾向にあるのだ。

 複数の専門家は、欧米の著名ブランドに比べて中国ブランドはブランドそのものの歴史や文化が浅く、消費者の認知度も低いという事実を指摘する。また、「模造」「低品質」という中国企業にありがちなイメージから脱却できていないともする。企業やブランドのイメージが今まで以上に重視される時代において、この弱点は致命的だ。中国の高級ショッピングセンターに行っても、メインフロアの1階で見ることができるのは海外の高級及び著名ブランドのテナントばかり。中国ブランドはそれ以外のフロアに追いやられているのが現状だ。

 日系を含む外資系ブランドは、この中国人の海外ブランド志向を逆手にとって販売戦略を考えることも重要になる。「メイド・イン・ジャパン」を大きくアピールしたり、中国製品との品質の違いを訴求するというマーケティングが基本だろう。もちろん、12年秋に発生した反日デモなど突発的な出来事の際はこれらの戦略が裏目に出ることもある。そのため、「中国市場向けに開発」という一言を添えて現地消費者の自尊心をくすぐったり、現地著名人をイメージキャラクターに採用するなどの工夫も必要になってくるだろう。

 仏エルメスは08年に中国限定ブランドの「上下」を打ち出し、10年には上海で1号店をオープンした。中国及びアジアのテイストを取り入れたアパレル製品、アクセサリー、家具、陶磁器などを展開している。資生堂も中国専用ブランド「欧珀(AUPRES=オプレ)」を持っている。地域限定や現地発のサブブランドを立ち上げるのも一考に値するだろう。

 ただ、その際に気を付けることは、現地消費者の心象だ。「中国向け製品は本国向けと違う二流品だろう」と思い込む人もまだまだ多い。何の根拠もなく、本国で基準に満たなかった製品が中国市場に回されて安く売られているというデマがインターネットなどを介して広がることもある。これが企業への反感につながり、不買運動でも広がろうものなら元も子もない。

 日本企業やブランドは、品質を愚直なまでにアピールすることはもちろん、ブランドストーリーを構築したりパッケージを現地仕様にするなど、中国人消費者向けのマーケティングで何らかのアクセントをつける工夫も大事だろう。「そこまでやるか」ぐらいに思われるまで商品PRを行えば、それなりに効果がついてくるのも中国マーケットである。

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