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日系小売事業者の宿命と課題
ヤマダ電機が南京旗艦店を閉鎖するワケ
2013年4月25日

 日系企業がまた中国店舗を閉鎖する。家電量販のヤマダ電機は4月22日、南京店を5月末で閉鎖すると発表した。瀋陽店(2010年12月開業)と天津店(11年6月開業)は営業を続けるが、12年3月に鳴り物入りでオープンした南京店は、わずか1年余りでクローズする。伊勢丹も瀋陽店を同じ5月いっぱいで閉鎖することを明らかにしているが、改めて日系小売事業者による中国展開の難しさをつきつけられた形だ。

 ヤマダ電機南京店はグルメストリートとしても人気がある新街口に立地。全7フロア・総売場面積1万6000平方メートルの大型旗艦店である。同社の山田昇会長は出店の理由として「南京市当局からの強い要請があった」としていた。店長以下すべてのスタッフが中国人で、「お客様第一」という日本風のサービスを掲げた運営が特徴的だ。

 ヤマダ電機は今回の閉鎖理由について、尖閣諸島問題に端を発する日本製品の不買運動などやサプライチェーンの未整備を挙げているが、現地の声をまとめると、どうやらそれだけではないようだ。

 実は、日本企業に限らず、外資系家電量販店はいずれも中国市場で苦戦している。米ベストバイ(中国語で「百思買」)は06年に江蘇五星電器を買収する形で進出したが、売り上げが伸び悩み、11年2月に全9店舗を閉鎖。中国市場からの撤退を余儀なくされている。台湾の鴻海グループが経営していた独メトロと合弁の家電量販店、万得城電器(メディア・マルクト)は13年3月、全7店の営業を終了することを明らかにした。

 外資系企業の撤退は「水土不服(水が合わない)」という言葉で片付けられてしまうことが多い。中国のビジネスモデルに対応できず、売り上げが当初予想ほど伸びず、結果的に店舗拡大どころか市場撤退に追い込まれてしまうケースが少なくない。しかし、この敗因を探ることで中国市場の攻略法や中国企業の強みが分かってくるのも事実だ。

 中国の家電量販店の特徴としてよく指摘されるのは、「買取方式」ではなく「場所貸しモデル」ということだ。簡単に言えば、家電量販店は在庫を抱えず、商品供給者(メーカー)に販売スペースを賃貸しすることで収益を稼ぐモデルである。また、ただの家賃だけではなく、進場費(いわゆる入場料)などさまざまな名目で各種費用をメーカーに請求し、収益を上積みしている。販売員の多くもメーカー派遣だ。製品を買い取り、従業員も全て自社で抱えることが多い外資系とは正反対のスタイルと言えよう。

 また、規模のメリットも重要だ。国美電器や蘇寧電器は中国全土に店舗網を広げており、メーカー側へのバーゲニングパワーが強い。販売スペースの賃貸料や進場費、広告費などの決定は量販店側が主導権を握ることができる。メーカー側は大手量販店の販売網を無視することはできず、やや高いコストを払いながらも出店し、販売を増やすために大幅割引も行う。加えて、量販店側が主催するセールの際には赤字覚悟で参加しなければならないときもある。外資系量販店は集中的な出店で規模のメリットを追求することは難しい。大量調達や店舗ごとの経営協力などもできず、高コスト体質になってしまいがちだ。それは結果的に店頭価格の差に表れてしまう。

 ヤマダ電機は南京店オープンの際、「店のコンセプトは世界から集めた最先端の家電品を、心ゆくまでお試しいただくこと」としていた。商品を実体験できるサービスなどがそれに当たるだろう。しかし、残念なことに、中国の消費者は安さが優先事項のようである。サービスがどれだけ良くても、価格が隣の中国系店舗より高ければ購入をためらってしまう。決して日本式のサービスが通用しないと言うわけではない。ただ、価格面での優位性はサービスの質を上回ってしまうのも現実なのである。

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