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蘇果や蘇寧などの存在感が圧倒的な南京市場
高い地場企業の壁、台湾系コンビニが南京撤退
2013年10月21日

 コンビニエンスストアの旺仔便利店が南京市場から撤退する。小売チェーン店のカギとなる配送の効率性や規模のメリットなどの構築がうまくいかなかったようだが、それ以上に地場大手の牙城を崩せなかったことが大きな理由のようだ。中国では地域や都市によって戦略が異なり、自社の強みを必ずしも発揮できないことを改めて思い知らされる。

 旺仔便利店は、台湾系の食品メーカーである中国旺旺が傘下の南京幸旺を介して行っているコンビニ事業である。2011年11月に南京国際金融中心に第1号店をオープンし、南京市場に進出。あっという間に28店舗まで拡大し、13年末までに80店舗、17年までに華東市場で500店舗を設けることを計画していた。

 ところが、13年年初から歯車が狂い始める。まずは5店舗を閉鎖し、ほどなくしてさらに7店舗をクローズした。10月に入ると「全品5割引き」などのセールを行う店舗も見られるなど迷走。ついに残りの店舗も閉店し、全面撤退することになった。

 旺仔便利店は、地下鉄駅構内の店舗などは人気があったという。河西CBDのビジネス街にある地下鉄駅、奥体東站の店舗は若者やサラリーマン・OLに人気で、とうもろこし、おでん、ホットドッグなどの店内調理品に加え、ホットコーヒーや饅頭が売れ筋商品だった。一方、市中心部の夫子廟や新街口の店舗はそれほど賑わっておらず、1日当たり売上高も3000~4000元程度のところがほとんどだったという。全体的には赤字店舗が多く、経営状況がよくなかった。

 苦戦の最大要因は強力なライバルの存在だ。南京地場系の小売チェーン大手、蘇果である。同社は12年末時点で2098店舗を展開しており、年商425億元の大企業。南京市場ではコンビニ400店舗弱、スーパー80店舗、大型ショッピングセンター30店舗以上を営業中だ。この規模のメリットに対抗するのは困難極まりなく、セブン―イレブンやファミリーマートも同市への進出を躊躇している。

 旺仔便利店は大部分の店舗を住宅街に近い社区(コミュニティー地区)に設けたが、価格設定は近隣のスーパーよりも高く、何の特徴も出せずじまいだった。また、蘇果の社区への進出により競争が激しくなる一方で、品揃えや配送面での充実性もかなうものではなかった。11年のオープン時に「進出地に南京を選んだのは一定のリスクがある」と評した者もいたが、それが早くも当たったことになる。

 南京と言えば、ヤマダ電機が13年6月に撤退した地だ。販売不振の背景には、地場大手の家電量販店、蘇寧の存在があったともされる。奇しくも、旺仔便利店も地場系の蘇果という高い壁に阻まれた格好だ。

南京に限らず、中国の地方都市では地場系大手企業の存在があまりにも大きく、各地でチェーン展開をしてきた企業の成功体験が必ずしも当てはまらないことも多い。そのため、単独進出の場合は一定の覚悟と長期的な戦略を持つことが重要で、それ以外の場合は地場系企業と組んで「ホームの利」を得ることも考え方の一つだろう。中国の各市場は一枚岩ではなく、個別に見ていかなければならないのは言うまでもない。

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