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ナイキの戦略から見る中国スポーツ用品市場(1)
スポーツの認識向上が急務、カジュアルブランドからの脱却を
2014年3月4日

 スポーツ大国と言われる中国。サッカーやバスケットボール、卓球などのプロリーグがあり、オリンピックや各種世界大会でも中国人選手の活躍が目立つ。ただ、市民スポーツというレベルではまだまだ普及が進んでいない。スポーツ界ではメダル重視のエリート教育が重視されており、その反動なのだろうか、趣味としてのスポーツへの理解はまだまだ不足している。日本とは異なり、学校のクラブ活動の少なさという事情もあるのかもしれない。2008年の北京五輪を契機にスポーツブームが到来し、スポーツ用品市場も一つのピークを迎えたが、楽観的な見通しが災いして過剰生産や在庫の山を築くという結果になった。同市場はここ数年、伸び悩みと衰退が続いており、ナイキやアディダスといった国際大手もその例外ではない。もっとも、市民のスポーツへの認識は徐々に高まっており、スポーツブランドが活躍する余地はこれから増えてくるかもしれない。

 今回、我々はナイキのマーチャンダイジングトレーニング部長のジョイス・リン氏を招き、中国のスポーツアパレル市場の現状とナイキの市場戦略を話してもらった。

――中国のスポーツ用品市場はどのような競争状態にありますか。その中でのナイキのポジショニングを教えてください。

 12年の中国スポーツ用品市場は1500億元に迫る規模だった。リーディングブランドはナイキとアディダスで、市場シェアはそれぞれ12%前後。ナイキがややリードしている。以下、中国系の安踏、李寧、361度の順となり、シェアはいずれも5%程度。ただ、ここ2年ほどで中国系ブランドのシェアは低下している。

 当社の中国事業の売上高(13年5月期)は24億5300万米ドルで、前期比3%の減少だった。内訳は、シューズが14億9300万米ドル、アパレルが8億2900万米ドル、各種スポーツ用品が1億3100万米ドル。市場全体ではニューバランスの成長が目立った。韓国で著名人をイメージキャラクターに用い、テレビ番組や映画での露出を増やしたことが若者に好評で、この勢いがアジア市場全体に広がった。

 中国のスポーツ用品市場において当社はハイエンド路線を行く唯一のブランドである。一方、中国系ブランドは、デザイン、ロゴ、商品陳列などいずれの面においても当社を真似している。どの店に行ってもナイキの店舗にいるという錯覚を覚えるくらいだ。これといった個性や特色はなく、商品の価格が安いだけだ。そのため、現地消費者は経済水準が一定程度まで上がれば、中国系ブランドではなくナイキを選ぶ傾向にある。これが中国系ブランドの存在感が徐々に低下している原因だ。

――中国のスポーツアパレル市場はどのような特徴がありますか。

 大きな特徴は、スポーツブランドとファッションブランドの区別があいまいなことだ。スポーツブランドの製品を買うのは、別にスポーツをすることが目的ではない。スポーツシューズやウェアは日常生活で着るアパレル品として扱われているのかもしれない。中国の消費者にとって、スポーツウェアとカジュアルウェアの間に本質的な区別はなく、それらのブランドが同じ土俵で競争している状況だ。これは他の市場では絶対にないことで、中国ならではの特色と言えよう。特に東北地方ではスポーツアパレルをファッショントレンドと捉える傾向強く、経済的余裕がある者はナイキの店舗で「NIKE」ロゴが大きく入った製品を買い漁ることもある。08年の北京五輪開催後は、スポーツブームの台頭と共にこのような状況が少しずつ変わり、スポーツをする目的でスポーツウェアを買い求める人も増えてきた。それでも、大多数の消費者はやはり、スポーツアパレルをファッションブランドと認識している。(続)

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