中国消費洞察オンライン〜中国ビジネスをマーケティング視点から再構築!


「地産地消」時代をいかに戦うか(5)
日系企業は社内外のコミュニケーションに難あり?
2014年3月18日
情報の管理と共有については、多くの企業で市場部が中心となり調査会社からのレポートを管理し、自ら収集した情報と合わせて報告書を作成している。そのうえで、メールやデータベース上で社内各部門と共有する。情報の活用法だが、「内部で会議し討論。各方面の意見を聞く」(ABF)、「何回も分析・確認したうえで、営業部や開発部に伝える」(ダウ・ケミカル)、「調査結果及びレポートの活用は各部門の決定に従う」(奇瑞汽車)というように各社の対応で微妙な温度差が見られた。部を跨いでの情報共有はどの企業でも課題のようだが、いずれも収集した情報を積極活用し、実際のアクションに結び付けようとする姿勢は明らかだ。

 一方、インタビュー対象の日系企業の対応が良くも悪くも日本らしいことが気になった。情報共有については、「日本本社も独自に調査を行うが何を調べているか分からない時も」あるそうで、日中間での社内コミュニケーションが必ずしもうまく行っていないことがうかがえる。

 また、「通常、調査報告はするが、見るだけで、その後のアクションはほとんどない。最後は日本人上司の“看心情”(「機嫌次第」の意)」とあきらめ顔で、せっかくの調査も実務にフィードバックされていないことが多いようだ。逆に言えば、これらの点を改善していくことで情報の効果的な活用が図られるのかもしれない。

 日系企業に対する各社の印象もまとめてみた。予想通りネガティブな印象が多く、特に社内規定の複雑さやペーパーワークの多さを指摘する声があった。また、残業が多く、仕事のプレッシャーが大きいとも見られ、欧米企業との企業文化のギャップがあると思われている。市場や商品面では、概してマーケットの実情に対する反応が鈍く、新商品の開発ペースも速くなく、保守的な企業スタイルが影響しているとの声が目立った。それゆえ、流通ルートの開拓が進まず、結果的に市場シェアが伸び悩むという悪循環になっているのではないだろうか。

 耳が痛い話だが、日系企業の問題点を個別に見てみると、「従業員からのホウレンソウ(形式にこだわり過ぎという意味だろう)」「代理店からの偏った報告」「本社と現地法人の連携不足」「調査会社利用を躊躇」「情報収集・分析からアクションへの欠如」なとどなる。日系企業自身が分かっている問題ではあるが、外からも同じように見られているのである。(続)


 ABF  ダウ・ケミカル  太太楽  奇瑞汽車  日系複合機
情報の管理と共有 メールや印刷版で社内共有。 管理データベースあり。調査依頼部門(たとえば営業部・開発部)と情報を共有。   
戦略策定の参考に。資料は必ず印刷しておく(データ損傷を避けるため)。市場部、営業部、商品開発部、経営層とで共有。 調査会社からの調査分析レポートに代理店、業界団体、フォーラムなどの情報を統合し、市場部がまとめる。 調査会社からのレポートは市場部と営業部で共有。日本本社とも共有するときもある。日本本社も独自に調査を行うが何を調べているか分からない時も。
収集情報のアクションプランへの転化 収集した情報を元に内部で会議し討論。各方面の意見を聞く。 収集した情報を何回も分析・確認したうえで、営業部や開発部に伝える。 市場部リーダーは市場の情報収集を特に重視。調査から得られた消費者ニーズの結果は通常商品に反映。   
調査結果及びレポートの活用は各部門の決定に従う。   
収集した情報を元に分析し改善策を提出するが、実施するかどうかは上司の判断による。通常、調査報告はするが見るだけで、その後のアクションはほとんどない。
 日系企業に対する印象
日本製品は品質がよく評判もいい。しかし社内規定が複雑でペーパーワークが多い。市場のトレンドや情報に対する反応も鈍い。 企業文化のギャップが大きい。欧米企業はよりオープン、日系企業は保守的。職場環境も厳粛で、プレッシャーが大きい。

業務面では、社内フローが複雑、残業が多い、仕事のプレッシャーが大きい。商品面では、値段が高い、新商品開発速度が遅い、市場に対する反応が遅い、日本本社から承認を得る必要があるため新商品投入などが我々ほど速くない。流通ルートの開発力弱い、市場シェア低いなど。

部品調達、設計、生産環境、技術などの部門が日系企業との交流多い。製造技術は最先端で、オートメーション化が進んでいる。品質も安定。しかし、自動車産業の変化は速く、新しいものの許容度も高い。保守的な日本企業との大きな違い。



このページをA4版で印刷する
 前のページに戻る

pageTop