中国消費洞察オンライン〜中国ビジネスをマーケティング視点から再構築!


越境EC「海淘(ハイタオ)」の現状と最新動向(2)
元高が越境ECを後押し
2014年12月25日

 少々前の統計だが、もう一つのデータを見てみよう。経済産業省がまとめた電子商取引に関する市場調査によると、12年における中国人消費者の日本のネット通販での購入額は1199億円だった。また、米国からの購入額はそれを上回る1669億円に上る。逆に、日本や米国がネット通販経由で中国から購入する額は小さく、中国側とすれば大幅な「入超」となっている。中国人による海外製品の購入意欲の高まりがよく分かる。
EC______.JPG
所得水準も向上している中国



 中国で越境ECが盛んになっている背景には経済的及び社会的な変化がある。主な点としては、(1)所得水準の向上、(2)消費者嗜好の変化、(3)中国製製品への不信感、(4)為替レートの変動、などが挙げられる。

 (1)の所得水準の向上は、もちろん中国の経済発展に伴うものだ。国家統計局によると、13年の中国全国民の年間平均可処分所得は前年比10.9%増の1万8311元だった。戸籍別では、農村住民の年間平均純収入は前年比12.4%増の8896元で、都市住民の年間平均可処分所得は同9.7%増の2万6955元となっている。額としては先進国と比べるとまだ差があるが、増加率を見ると13年の中国GDP成長率(7.7%)を上回っている。経済成長の恩恵を所得で感じている市民が多く、それが越境ECを含む消費を押し上げる要因になっていると思われる。

 (2)の消費者嗜好の変化と(3)の中国製製品への不信感は表裏一体と言ってもいい。所得水準の向上に伴い、買物面でも量より質を求める傾向が特に都市部市民の間に見られ、「多少高くても良い物にはお金を惜しまない」と考える者が増えている。というのも、前述のように食品を中心に中国製製品への不信感があるからだ。全ての製品が悪いというわけではないが、同じ物なら少し高くても高品質で安全性が保障できる海外製を好む消費者が多いようだ。

最後の(4)だが、円の対人民元レートの下落が好例だ。12年時点で1元=約12.5円程度だった為替レートは、日本の金融緩和に伴う円安の進行と共に、14年10月には1元=約17円前後まで円安(元高)が進んだ。単純計算で、この2年間で円は元に対して約40%も安くなった。相対的に強くなった元で中国人消費者の購買力が向上し、割安になった日本製品を今まで以上に買い求めるようになったというわけだ。(続)

Copyright (C) CAST Consulting Co., Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
本資料に関する著作権は弊社又は弊社に所属する作成者に属するものであり、本資料の無断引用、無断変更、転写又は複写は固くお断りいたします。

このページをA4版で印刷する
 前のページに戻る

pageTop