中国消費洞察オンライン〜中国ビジネスをマーケティング視点から再構築!


人事・報酬制度のポイント制、中国でテイクオフ(1)
時代変化の中で福利厚生システムも変革中
2015年4月9日

 二桁台の高度経済成長から「新常態(ニューノーマル)」という中低速経済成長時代に突入した中国。これまでジョブホッピング(転職)を繰り返しながら倍々ゲームで給与を上昇させてきた優秀な中国ホワイトカラー層も、今後の急成長が見込めないビジネス環境ではより安定した職を求めるようになってきている。
________________________1.JPG
福利厚生システムが変革中


 一方で、人件費や家賃の高騰によるビジネスコストの上昇、労働契約法の改正などによる労務リスクの増大など、中国に進出した外資系企業の経営環境にも大きな変化が生じている。特に2009年の日本政府による尖閣諸島国有化に伴う反日騒動や昨今の円安・人民元高など、日系企業を取り巻く中国ビジネス環境は大きな転機を迎えているといっても過言ではない。

 こうしたビジネス環境の変化のなか、日系企業を中心に従業員への「福利厚生」や「インセンティブ」などのキーワードで新たな人事・報酬制度を提案しているベネフィット・ワン上海(貝那商務諮詢(上海)有限公司)の総経理・鈴木梢一郎氏に、中国でのビジネス状況から中国人従業員の福利厚生に対する考え方の変化、今後の福利厚生のあり方についてインタビューした。

――御社の概況を教えていただけますか。

 ベネフィット・ワン上海は2012年5月の設立。日本のベネフィット・ワン株式会社の100%独資だ。14年4月には北京にも営業事務所を開設した。弊社は主に「インセンティブカフェ」という従業員向け「福利厚生/インセンティブ」サービスを提供している。紅包(春節)や月餅(中秋節)を贈る代わりに、成績優秀な従業員に報酬としてポイントを付与し、その溜まったポイントに応じて商品やサービスが選べる福利厚生システムだ。同システムは1990年代にアメリカで「ポイントリワーズシステム」として先行して普及し、日本でも2000年くらいから徐々に浸透し始めた。弊社の日本本社はその先駆者的位置づけで、業界をリードしている。

 日本では戦後から高度経済成長へと続く過程で、社員寮を完備し、社員旅行を企画、さらにはそうしたイベントや活動のための保養所も用意するなど終身雇用を前提とした「人生丸抱え」の福利厚生が一般的となった。ただ、90年前後のバブル崩壊後、時代の変化とともにそうした福利厚生制度を維持するのが難しくなった。特に90年代後半の山一証券や日本長期信用銀行などの経営破綻により大手金融機関に対して公的資金が注入されてから、従業員の給与水準や福利厚生の厚さがクローズアップされると、社会全体で福利厚生のあり方が見直された。

 一方で、従業員の考え方も多様化するにつれ、社員旅行を好まない若年層や会社から与えられるのではなく自分で自由に選択できる福利厚生のコンセプトが受け入れられるようになった。そうした時代背景に押される形で、弊社の日本本社は1996年に設立され、2000年前後から業績が一気に伸びた。私は1999年入社で、ちょうどほぼ創業期から事業拡大を間近に体験した。(続)

Copyright (C) CAST Consulting Co., Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
本資料に関する著作権は弊社又は弊社に所属する作成者に属するものであり、本資料の無断引用、無断変更、転写又は複写は固くお断りいたします。

このページをA4版で印刷する
 前のページに戻る

pageTop