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月餅市場の変貌から見る中国ベーカリー業界 (1)
倹約令の影響から月餅相場が下落
2015年12月8日
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【倹約令で月餅市場が一変】
  9月下旬の中秋節には、一家団らんで月餅を食べるのが伝統的な過ごし方だ。友達同士で月餅を贈り合ったり、企業が従業員やお得意様に月餅券を配ったりするのはこの季節に欠かせない礼儀である。贈り物文化が盛んな中国では、この行事に乗じて、政府関係者に燕の巣やアワビ入りの高価な月餅を贈ったり、もしくは1000元単位の商品券を包むなど、「便宜を図ってもらうため」の贈答行為も日常茶飯事だ。

  民間企業で働く、とあるマネージャー職の発言をまとめるとこうだ。「中秋節になると、政府幹部やお得意様向けの月餅や月餅引き換え券の贈り合いで忙しい。価格は1000元以上。以前、月餅6個とイタリア産オリーブオイル、茶膏2瓶からなる1999元のセットを贈ったことがある。その多くは見かけ倒しで、価格も不当に高いが、つながりを持ったり今後助けてもらうことがあるかもしれないので、お金はかけるべき」

  ところが、2013年の中秋節になると、倹約令の一環で「月餅禁止令」などが出され、多くの政府機関の幹部が贈り物を受け取らず、風紀を改善する旨を宣言した。中国経済も下ブレ圧力が強まっており、高級月餅の販売は13年と14年の両年において惨憺たるものだった。

 一方、14年以降は各スーパーや月餅メーカーが価格調整に乗り出し、100~200元の月餅セットが店にあふれた。「親民平価(庶民価格)」なるスローガンの下、ウォルマートやカルフールなどの小売店やケーキ店チェーンもそれに追随した。月餅は簡易包装で、中身は小豆のこしあん、蓮蓉(蓮のあん)、五仁(木の実のあん)など大衆的なもの。バラ売りの商品も増えた。

【ネット上に豊富な月餅関連商品】
  中国焙烤食品糖製品工業協会のまとめによると、今年の月餅セットの約80%は200元以下のものだったという。ネット上でも庶民価格の商品の人気が高く、アリババ系の天猫で「中秋月餅」の文字で検索すると、人気上位30品はいずれも100元以下だった。39.9元の稲香村月餅は20万セットが売れた。

  「反腐敗」の号令の下、店からは高級月餅などの豪華贈答品セットが消えた一方、ネット上では比較的高級品が目立った。天猫で検索してみると、1000元以上の高級品を見つけることができる。「燕太太」という店では燕の巣の月餅8個セットが688元で販売されていた。「集味村」では“御尊盒”というセット商品が1427.8元だった。11個の月餅のうち、一つだけナマコとアワビのあんで、その他は蓮蓉などの材料だ。このほか、月餅や贈答品引換券なども人気だった。中秋節の福利厚生として、一般従業員には200~300元、管理職には600元、幹部には900元相当の月餅券が相場という。(続)
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