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「文創」の旗手、台湾系「誠品生活蘇州」が大盛況(5)
自由な“立ち&座り読み”スペースが客足増に
2016年4月22日
自由な“立ち&座り読み”スペースが客足増に

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日本と欧米のデザイン関連本は人気ジャンル
 誠品の書籍の品揃えは、他書店との差別化が最も顕著な特色だ。一般的な中国の書店では、「成功学」「帝王学」「青春小説」「ファンタジー小説」などのジャンルが大々的に売られているのに対して、誠品書店ではより独自色が強く打ち出されている。書籍を採択する50名ほどの担当チームが、世界中から同社の価値観に合う書籍を探し出す業務に従事し、同時に読者に対する推薦の責務も負う。

 出版社による派手な宣伝や、著名作家による著作である必要はない。重要なのは選書担当者の感性に合ったものであること。中国語や外国語、児童向けに毎月8~16冊の本が推薦されている。販売される本のジャンルも文学や芸術関連書籍だけでなく、社会情勢、ライフスタイル、デザイン、映画関連、図解書など多岐に渡る。

 なかでも最大の強みは豊富な台湾繁体字書籍と外国語書籍だろう。15万種の書籍のうち、約4万が繁体字書籍、1万がその他外国語書籍だ。建築、撮影、アート、絵本等のジャンルの書籍が特に充実している。誠品を支持する客の大半が、台湾版書籍と外国語書籍の豊富さに惹かれて来た消費者だ。

 一方、誠品も中国進出以降、簡体字書籍にも力を入れ始め、現在、台湾と香港の店舗では簡体字書籍のコーナーが設けられている。中国国営の書籍輸出入企業と提携。誠品がまず入荷したい書籍のリストを作成、提携先の国営企業が政府の政策と照らし合わせ問題がないかを判断したうえで、「双岸三地(中国、台湾、香港)」に双方向で書籍をやり取りしている。今後もこの提携を通して、より多くの繁体字書籍が中国国内で販売され、同時に簡体字書籍が香港や台湾で販売される予定だ。こうした書籍の交流を通して、誠品の価値観や精神もより多くの中国人読者に影響を与えるに違いないだろう。

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常に満席の読書コーナー
 書店エリアは、誠品蘇州のなかでも最も多くの客で賑わっている。人気のない書籍コーナーはないほどで、椅子に座って本が読める読書コーナーは常に満席状態。誰もが熱心に本を選んだり、読んだりしている光景からは、実店舗がネット販売の勢いに押されて次々と閉店に追い込まれていることが、まるで嘘のように思えるほどだ。

 児童書や絵本などを集めた誠品児童館についていえば、これまで中国内にこれほど充実した子供向け書籍コーナーを目にしたことはない。世界各地から取り寄せられた大量の絵本に囲まれた明るく広々としたフロア空間で、休日には多くの親子や家族連れが地面に座り込んで読書に没頭し、足の踏み場もないほどの混雑ぶりだ。読者に快適な読書空間を提案する誠品の手法は、中国人に対して読書のイメージをより快適で楽しいものに塗り替えている。

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