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中国書籍市場の「いま」に迫る (1)
「書籍+喫茶+雑貨」の複合型書店がトレンド
2016年5月3日

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多くの客で賑わう上海福州路の老舗書店「上海書城」

 中国書籍市場では、「当当」、「京東」等のオンライン書店が人気を集め、リアル書店(実店舗型書店)は苦境に立たされていると言われて久しい。全国工商聯書業商会の2014年調査結果によると、実際に過去10年間で5割近くの書店が閉店に追い込まれている。30年以上の歴史をもつ上海書城淮海店、36拠点を展開した光合作書吧、さらには北京のインテリ層に愛された風入松書店なども数に含まれるというから驚きだ。携帯電話やタブレットの普及に伴い、電子書籍を選択する人が増えたことも、リアル書店の生き残りをますます困難にしている。

  このような大局にもかかわらず、昨年からリアル書店復活のトレンドが顕著になってきている。大型書店チェーンはどこも内装のリニューアルに着手、一線及び二線級都市では独立型書店の開店も雨後の筍のごとく相次いでいる。様々な地域密着型書店、テーマ型書店、大学書店などが等が至る所にオープンし、街に文化とアートの香りを漂わせている。

  このリアル書店の復活傾向には、中国政府が2013年から開始した優遇政策が大きく影響している。財政部は13年12月31日から17年12月31日までの4年間、書籍卸売小売業界の増値税を免除することを決定。この政策により書店業界の財務負担は大きく軽減した。これが現在の復活トレンドのベースにあることは間違いないだろう。

  政府は更に、クオリティが高く個性を前面に押し出した将来有望な書店に対して補助金を与えることも決定。上海市では12年にリアル書店を援助することを目的とする「上海市出版物発行網点(ネットワーク)建設扶持資金管理弁法」と「上海市出版物発行網点建設引導目録」が公布された。この法令により12年から15年までの間、毎年リアル書店へのサポートと読書文化普及のために、1,300~1,500万元の資金が投入されることになった。

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「文創」をテーマにした雑貨や小物等の販売と書店を結び付ける「複合型経営」がトレンド
  このような政府によるサポートの背景には、オンライン書店からの脅威のほかに、テナントの賃貸料や人件費の絶え間ない上昇に苦しみ続ける書店がほとんどで、書籍のコストが多少下がったとしても、経営継続に対するプレッシャーや困難は根本的には解決しないことがあげられる。

  “文創”(「文化(カルチャー)」+「創造(クリエイティブ)」)をテーマにした雑貨や小物等の販売と書店を結び付ける「複合型経営」への相次ぐ転換は、その状況からの脱却を目指す試みと捉えていいだろう。新しい書店の多くは、カフェや各種イベントを開催できるコミュニティスペースを併設。来店客は本のほかに「文創」雑貨や小物も購入でき、さらには講演会や展覧会、オリジナル雑貨マーケットなど各種イベントに参加することもできる。商業とカルチャーを結び付けた新しい小売形態が続々と各地に誕生している。(続)

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