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サラダやスイーツを拡充し、ワンランク上のライフスタイル提案
コンビニ界で大胆なチャレンジ、台湾系の喜士多
2016年5月31日
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  世界各地のレストランやバーが集まる上海虹橋地区・虹梅路の「老外街(外国人ストリート)」。日本人学校もあり、外国人の居住比率が高い住宅エリアだ。お洒落なカフェやベーカリーなどが並び、ワンランク上の生活スタイルを求める市民が集う。

  その一角に、パリの街角で見かけるような店がオープンした。店に入ると、レンガ造りの柱を背に、花壇が並べられたテーブル席で、コーヒーやサンドイッチを手に談笑する客の姿が目に入る。一見、お洒落なフレンチレストランのようだが、店の奥には弁当や惣菜、飲料、カップ麺、日用品などの商品棚が並ぶ。台湾系コンビニエンスストアの「喜士多(C-store)」だ。

  喜士多は、台湾潤泰集団が運営するコンビニブランドで、2001年に上海本部、03年に華南地区本部を広州に設置。台湾と日本の先進的な店舗運営管理とノウハウを結合し、中国事業を展開してきた。現在、直営及び加盟店合わせて600超の店舗数を誇る。上海や広州のほか、江蘇省(無錫、蘇州、昆山、張家港など)、浙江省(嘉興、紹興、寧波、杭州など)、広東省(深圳、佛山など)で加盟店を募り、さらなる拡大を図っている。ちなみに、中国ナンバーワンの外資系GMSである「大潤発(RT-Mart)」も同じ潤泰集団だ。

  15年に入り、喜士多は一部店舗で客層に応じて設計を変える実験を開始した。前述の虹梅路店では、外国人が多くバス停が目の前にあることから、ヨーロッパの田園風景をイメージ。バスを待つ傍ら、のんびりと優雅に過ごせる雰囲気を作り上げた。縦長の店舗物件を活用し、前方には16人が座れるイートインコーナー、後方には商品の陳列棚を配置。イートインコーナーは店舗全体の実に4割の面積を占める。朝の出勤時などのピーク時には席がほぼ埋まるほどの盛況ぶりだ。

  同店の店長によると、改装後から店内で食事をする客が明らかに増えているという。コーヒーやビール、アイスクリームなどの売上も伸び、1日当たりの平均売上数が100杯を超えるドリップ式コーヒーは、9月にマシンを1台増やしたほど。雑誌コーナーは撤去し、果物やサラダなどの惣菜、輸入食品の比率を高めるなどの工夫も怠らない。

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  コンビニ界の常識を覆す大胆なチャレンジも行う。夏にはアサヒの生ビールサーバーを設置し、1杯9元で提供。また、中国人の間で日本土産の定番となっている「白い恋人」も販売する。12個入りで99元(約2000円)と日本での定価760円と比べ2倍以上の値段ながら、品切れになりかけている店舗もあるほどだ。

  静安区の昌平路店では、女性客が多いことから、ギリシャの空と雲をイメージする青と白色を基調に、草花が生い茂るデザインを採用。商品は、コーヒーやスイーツ、サラダ、乳製品などをメインとし、フルーツセットは他店舗よりも多く用意している。常に新鮮さを求める女性客のニーズを踏まえ、新商品の開発にも注力。2週間ごとにサラダなどの惣菜を2~3種類ずつ変更し、常に7種の商品が並ぶスイーツ類は随時構成を調整している。

  何か新しいことをやろうという発想と試みは、同社内に設置された「創新委員会」と呼ばれる組織が担う。「我々は本当に現状で最大限か? もっとできることはないか?」と自問自答を繰り返しながら、新たな企画や商品開発にチャレンジする。GMSの成功談やノウハウも生かしながら、喜士多が次にどんな新しい風を巻き起こすのか、注目したい。

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