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「ONE·一个」が提案する 都会の文学ライフ (1)
本とライフスタイルのコラボレーション
2016年7月4日
 
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読書アプリ「One」の3周年記念展は20歳前後の若者の間で人気に、入場口は長蛇の列が…
2015年10月、上海で最もハイセンスなショッピングモールの1つである静安嘉里中心(静安ケリーセンター)では「ONE·一个」と題された展覧会が開催されていた。入場口には20歳前後の若者を中心とする長い行列ができており、会場は文学的でさわやかな雰囲気に満ちていた。入場料はたったの1元(One)、筆者も好奇心から早速チケットを買い、中をのぞいてみることにした。「ONE·一个」というのは読書アプリの名前であり、これはその三周年記念展だった。

「ONE·一个」とは何か?

  「ONE·一个」は、中国の著名作家兼映画監督、オピニオンリーダー、カーレーサー、文芸業界プロデューサー等多くの肩書を持つ韓寒が、騰訊と提携して産み出したウェブマガジンだ。主なターゲットは18~35歳の文学を愛するスマホユーザー。一般の雑誌のような大量の情報発信は行わず、1日に1画像、1記事、1コラムに限定している。これにQ&A(読者からの疑問に編集部が回答する形式)と気になるグッズ紹介が1つずつ加わる。内容は全てオリジナルだ。「複雑世界里,一个就够了(複雑な世界に、1つで充分)」をキャッチコピーに、情報過多の現代社会において、毎日1つ、「ちょっと気になる」情報を読者に向けて発信している。1日15~20分あれば充分に読めてしまう内容は、忙しい現代人のライフスタイルニーズにもマッチする。人々はちょっと空いた時間を利用してアプリを開き、これを読む。毎日読んでも負担にならないのが特徴だ。

従来の書籍に取って代わる「こま切れ」のモバイル読書用コンテンツ

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「One」は都会のホワイトカラー層を中心に、「こま切れ型」読書アプリとして抜群の人気を誇る。
  中国インターネット情報センター(CNNIC)が公表した第37回「中国インターネット発展状況統計報告」によると、2015年12月現在、中国のインターネットユーザーは6.88億人、スマホユーザー6.2億人、ネットユーザーの90.1%がスマホを使用していることになる。携帯電話のみを使用しているネットユーザーも1.27億人に達し、ネットユーザー全体の18.5%を占めている。モバイルと4Gの普及により、読書関連アプリの成長も目を見張るものがある。一方人々はめまぐるしい生活や仕事に追われ、読書時間は減少傾向にある。読書するとしても、多くの人が通勤途中や昼休み、トイレ休憩等のこまぎれの時間しか利用できず、モバイル読書がトレンドとなり、関連アプリも大量に産み出されている。現在見られる読書アプリは3種類。1つ目は従来の紙媒体が運営するアプリ、2つ目は「Flipboard」や「Zaker」といったコンテンツ収集型アプリ、3つめが「ONE·一个」、「知乎日報」等の自主制作型アプリだ。中国の読書アプリ市場では現在コンテンツ収集型が最も人気が高い。内容が豊富であることがその理由だ。2015年にダウンロード数とユーザー評価で最も人気の高かった読書アプリのベスト5は「掌閲iRearder」、「書旗小説」「咪咕閲読」、「QQ閲読」、「天翼閲読」だった。

  「ONE·一个」は2012年10月にiOS上で正式に運営が開始された。韓寒の若年者層への圧倒的な人気を背景に、スタートから24時間足らずで「App Store」における中国エリアの無料ダウンロードランキング第1位に躍り出た。同年11月にはアンドロイド版もスタートし、ユーザー数を更に増やした。現在のユーザー数は3,000万人、アクセス回数は10億を超え、1日の平均アクティブユーザー数も200万人に達している。コンテンツ収集型には遠く及ばないとはいえ、都会のホワイトカラー層を中心に、「こま切れ型」読書アプリとしては抜群の人気を誇っている。(続)

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