中国消費洞察オンライン〜中国ビジネスをマーケティング視点から再構築!


「農夫山泉」、高級飲用水市場を”三本の矢”で攻略 (1)
高級ミネラルウォーターが飲用水業界の新トレンド
2016年7月18日

 

 IMG_2045_1.jpg
15年の中国飲用水の売上高は1,344億元、500強のメーカーがひしめく中、怡宝、農夫山泉、康師傅、娃哈哈など主要メーカーがシェア全体の62%を占めている
  昨年から一部の高級スーパーでガラスボトルに入ったちょっと風変わりな美しいミネラルウォーターを見かけるようになった。滑らかな曲線を描く細身のガラスボトルには動物や植物をモチーフにした繊細な図案が刻まれ、グラスアートを彷彿とさせる。高級感溢れるその外観から、どこか外国からの輸入品に違いないと手に取ってみると、それは中国ミネラルウォーターの雄、「農夫山泉」の製品だった。中国の飲用水ブランドが製品の外観にここまでこだわったのは初めてではないだろうか。

  農夫山泉と言えば、赤いキャップのプラスチックボトルでおなじみのブランド。「農夫山泉はほんのり甘い(農夫山泉有点甜)」、「私たちは水を製造しているのではありません。大自然をお届けしているだけなのです(我們不生産水、我們只是大自然的搬運工)」という2つのキャッチフレーズは、知らない人がいないと言っても過言ではない。中国飲用水業界で最も成功した宣伝広告だ。

 
 IMG_4536.jpg
赤いキャップのプラスチェックボトルがお馴染みの中国飲用水トップブランド「農夫山泉」
本社は浙江省の省都・杭州市にあり、飲用水のほか、茶飲料、ジュース、スポーツドリンク等も生産している。茶飲料「東方樹葉」、果汁飲料「農夫果園」、スポーツドリンクの「尖叫」、いずれもその分野をリードする製品だ。2015年の売上は150億人民元に達し、その比率は水とその他飲料がそれぞれ約50%だった。

  業界をリードするとは言いながら、これまでの製品は大衆的な価格設定のものばかり。例えば380mlのミネラルウォーターは、1.5元程度で販売されている。ハイエンドには程遠いポジショニングだ。今回、高級飲用水市場に参入するにあたり、農夫山泉は上記のガラスボトル製品のほか、乳幼児向けと学生向けのミネラルウォーター製品も同時発売し、大きな注目を集めている。

 


高級ミネラルウォーターが飲用水業界の新トレンド

 

 IMG_4730.jpg
高級ミネラルウォーターの成長は特に目覚ましい
中国の飲料業界において飲用水は最もニーズが高く、そのシェアを毎年伸ばしている。15年の飲用水の市場シェアは飲料市場全体の約50%を占め、販売量は8,400万トン、売上高は1,344億元だった。他の製品の売上が減少傾向を示す中、飲用水の販売は7.6%の増加となった。零細企業を除いたメーカーの数は500社に上り、怡宝、農夫山泉、康師傅、娃哈哈など主要メーカーがシェア全体の62%を占めている。

  飲用水の中でも、天然ミネラルウォーターと高級ミネラルウォーターの成長は特に目覚ましい。13年と14年の国産天然ミネラルウォーターの市場シェアの伸びはそれぞれ39%と78%であり、14年には飲用水市場の約15%を占めるに至っている。15年にはミネラルウォーター製品全体の生産量が1,537万トン前後に達し、市場シェアは18%に増加した。

  ハイエンド製品の成長は更に大きく、ACニールセン社のデータによると、14年には一般製品の成長が11~12%であったのに対し、ハイエンド製品の伸びは46~50%に達した。15年の販売規模は約100億元前後、飲用水市場全体の10%前後を占めるに至っている。

 
 IMG_2241.jpg
高級スーパーで輸入ミネラルウォーターの品数が充実
高級ミネラルウォーターはここ数年における飲用水市場の新たなトレンドだ。これまで、国内のミネラルウォーター市場は、一般大衆向け製品による低価格競争だった。長年の競争の結果、一般ミネラルウォーター製品の利益は低下の一途を辿り、平均利益率はわずか4%となっている。これに対し、ハイエンド製品は利益率がその6~7倍と非常に高い。だれもが知っているフランスの「エビアン」を例にとると、市場価格は約8.5元、一般ミネラルウォータ―製品の7倍に近い。

  現在、市場に出回っている高級ブランド製品にはエビアンのほか、外国製品ではノルウェーの「VOSS」、フランスの「ペリエ」、ニュージーランドの「antipodes」、国産ブランドでは「恒大氷水」、「昆侖山」、「5100西蔵氷川鉱泉水」、「百歳山」等がある。ここに来て農夫山泉が3種のハイエンド製品を同時発売したことは、高級ミネラルウォーター市場に対する確信の表れと取ることができるだろう (続)。

Copyright (C) CAST Consulting Co., Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
本資料に関する著作権は弊社又は弊社に所属する作成者に属するものであり、本資料の無断引用、無断変更、転写又は複写は固くお断りいたします。


 

このページをA4版で印刷する
 前のページに戻る

pageTop