中国消費洞察オンライン〜中国ビジネスをマーケティング視点から再構築!


近所の「体験館」が次の小売現場の新トレンド(1)
“体験”をキーワードにネットからリアルへの回帰進む
2016年8月16日
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アップルストアは「体験型」店舗の最象徴的な例
  「チャイナ・マーケット・インサイト」においてここ数回、「体験型マーケティング」というコンセプトについて取り上げて来た。この「体験型マーケティング」は、現在の中国市場を描写する重要なキーワードの1つだ。ネットショッピングの普及により従来型の実店舗は大きな打撃を被ったが、その実店舗がオンラインチャネルの構築に努める一方で、自らも確実に変化を遂げつつある。商品の展示と販売を主体にした従来型の店舗から、「体験」をメインに捉えた新しい施設への転換だ。この「体験型」店舗では消費者が実際に商品を手に触れ、その機能や良さを「体験」することができる。体験を通じて商品に対する理解が深まる他、ブランドの好感度アップも期待できる。アップルの「アップルストア」はその最も象徴的な例だろう。

  「体験型」の導入は実店舗に限られたことではない。多くのネットショップもオフラインの体験型店舗を開設し始めている。消費レベルの向上に伴い、単純なオンライン消費では製品機能や品質から、個性、アフターサービスまでという消費者の全方位的なニーズを満たすことが困難になっているためだ。オフラインの体験型店舗はそれを補う最も有効な手段といえる。

  この「体験」ブームは各業界を席巻し、携帯電話から食品、アパレルまで、多くのブランドが体験型実店舗を各地にオープンしている。中国最大のオンラインブックストア「当当網」、オンライン食品ブランド「三只松鼠」、不動産仲介の「捜房網」等、多くのインターネット企業が2016年にオフライン店舗開設を予定している。

  実際のところ、現在の消費市場においては単純なオンライン、或いはオフラインのみでは消費者の多元的なニーズを完全に満たすことは困難だ。オンライン、オフライン共にそれぞれ長所と短所がある。オフラインでは実際に製品を手に取ることができるが、オンラインでは不可能だ。よって、標準化されていないハイエンド商品はオフラインに向いている。一方、オンラインのいつでもどこでも購入可能という利便性は、オフラインには真似が難しい。よって、標準化された一般商品であれば、どこで購入しても同じものなので、ネットショッピングの方がやはり都合がいいだろう。このように、両者の良さをうまく融合させた販売手法が昨今叫ばれている「インターネット+」の時代に求められていると言える。

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テレビなど大型家電の購入では、消費者は実店舗に出向いて購入する傾向あり
  今年三月、クライアントの案件で、天津、武漢、成都及び杭州の4都市で家電製品の購入に関する消費者インタビューを実施した。その結果によると、利便性と価格面の理由から多くの人がオンラインで家電を購入するようになっている一方で、購入を決定する前にはやはり実店舗に足を運び、実物を目で確認したり、販売員の説明や実演を受けて外観や機能について理解を深めたり、更には他社製品との比較を行っていることが明らかになった。この傾向はテレビ、冷蔵庫、エアコンといった大型家電製品でより顕著だった。このことからも明らかなように、実店舗(体験型店舗)は消費者に商品を実際に体験する機会を提供するのに都合が良く、効果的なブランドアピールが可能だ。その上で、結果的にオンラインでの売上アップにも結びついていくことが期待できる。

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