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「短視頻(ショート動画)」と「直播(ライブ動画配信)」(1)
「90後」ソーシャルメディアのニューウェーブ
2016年9月12日

 

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現在中国で高い人気を誇る「Papi醬」
 2016年4月21日、「網紅」(ネットで爆発的人気を得た人)の1人である「Papi醤」 の広告入札が北京で開催され、上海の化粧品メーカーが2,200万元という高価格でこれを落札した。これは中国ニューメディアマーケット史上に残る象徴的事件だ。今回入札の対象となったのは、Papi醤初の動画挿入型広告(動画の後に放送される広告)。放送時期は16年5月21日以降の任意の月曜日、放送回数はたったの1回である。一般的には数十万元程度が相場のこの広告枠が2,200万元という破格の値段で入札された事実はメディア業界全体に大きな衝撃を与えた。

 

 この「Papi醤」とは何者なのか。一体なぜ2,200万元もの広告費を稼ぐことができたのだろうか??

 Papi醤、は29歳の上海人、既婚女性だ。2015年7月にオリジナルのショートコメディー動画の配信を開始、瞬く間に多くのファンを獲得した。動画の中でPapi醤は、雑然とした住居を背景に、普段着に素顔といういでたちで登場する。音声変換器を利用し、一人芝居の形式でのオリジナル動画を配信している。

 題材は社会現象や、巷の話題、男女関係等がメイン。現在彼女の微博(ミニブログ)の読者は1,664万人 、動画再生回数は2.9億回を超える。各動画の平均再生回数も753万回という多さだ。16年3月にはベンチャーキャピタルが1,200万元を投資、外部の投資を受けた初の「網紅」となった。

 

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ショート動画アプリは若者の自己表現ニーズを満たす
 Papi醤がここまでの人気と関心を集める背景には、現在の中国におけるニューメディア発展、特にショート動画の躍進がある。科学技術の進歩とインターネットの発達により、文字と画像、もしくは音声のみのコミュニケーションではネットユーザーの自己表現ニーズを満たすことが難しくなった。動画なら様々な瞬間を捉えて生き生きと表現することがより容易だ。この流れを受けて動画再生アプリが開発され、モバイル時代の流れに乗って大きく発展した。

 

 動画は短時間に多くの情報を伝達することが可能であり、スマホの普及とソーシャルネットワークの発達は動画制作及び配信をより手軽なものにした。こうしてショート動画は瞬く間に普及し、トレンドとなった。2013年からたったの2年ほどで、ショート動画市場では多くのアプリが開発され、競争も激化。代表的なアプリには「新浪微博」の「秒拍」、画像処理ソフト「美図秀秀」の美図軟件が開発した「美拍」、 三線・四線級都市や農村の若者をターゲットにした「快手」等がある。他にも「小珈秀」、「小影」、「多拍」、「趣拍」、「逗拍」、「楽拍」、「優拍」、「微可拍」等、例をあげればきりがない。

 さらに今年に入り、4GとWifiの普及に伴い、よりインタラクティブなライブ動画も人気を集めている。過去1年で数十のモバイルサイトが出現。これらのサイトには「映客」、「花椒直播」等の独立型新興サイトもあれば、 「網易Bobo」、「YY直播」等のようにパソコン全盛時代の動画サイトがモバイル版にリニューアルしたものもある。この他、「美拍」、「秒拍」といったショート動画の撮影・再生アプリにもライブ動画機能が追加された。

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「美拍」二もライプ動画機能が追加
  ショート動画やライブ動画の流行は全く新しい動画SNSの時代の到来を意味している。ショート動画やライブ動画の現在の状況はどうなっているのか?主要なサイトにはどのようなものがあり、それぞれの特色は何なのか?ユーザーの特徴は?今後の発展はどう予想できるのか?そして各ブランドはこれらのショート動画やライブ動画を利用したどんなマーケティングが可能なのか?以下ではこれらについてより深く掘り下げてみたい。

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