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中国モバイル決済の最新動向を徹底分析 (1)
スマホ決済普遍化で“財布を持たない”若者が急増中
2016年10月20日

 

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CNN記者が北京で現金を持たずに24時間過ごす実験を実施
 ほんのひと昔前まで、外出の際に現金を1円(元)も持たずに出かけるというのはあり得ない、どこにも行けないというのが一般的な感覚だった。そんな常識に今、変化が起きている。現金を持たずに出かけることが、ごく普通のライフスタイルの一部になりつつある。

 2016年4月、ウィル・リプレイ(Will Ripley)というCNNの記者が、北京で現金を全く持たずに24時間過ごすという実験を行った。彼はスマートフォン(スマホ)の「微信支付(Wechatウォレット )」を使い道端で売られている煎餅果子(小麦粉を薄く焼いて卵やネギを巻いたもの)を、またアリババ系「支付宝(ALIPAY)」でカフェのコーヒーを買うことに成功した。そもそも彼のアシスタントがこの支付宝で水道・光熱費や家賃を支払い、外食の際も携帯電話で支払を済ますのを目撃したことがこの実験のきっかけだった。

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屋台の煎餅果子もWechat支払い可能

 アメリカでも現金を使うことはそれほど多くない。家賃は小切手を切れば良いし、支払の多くはネット上で処理できる。それでもクレジットカードを持たずに出かけることはめったにない。これが北京では異なる。スマホさえ持てば、重い財布はもちろんのこと、クレジットカードも不要だ。「北京では、スマホで何でも簡単に処理でき、非常に便利で快適」、これが実験を終えた感想だった---この記事は中国におけるモバイル決済の普及度の高さを世界に知らしめた。

 現在、中国では大型のチェーン店から街角の小さな店まで、モバイル決済を導入した店が急増している。その多くが利用するのが「支付宝」と「微信支付」だ。筆者の経験でも、昨年あたりから携帯電話で支払を行う機会が増えはじめ、最近では現金に1度も手に触れない日も少なくない。日々利用するコンビニエンスストアやスーパー、ドリンクスタンド、タクシー、食品のテイクアウト等、ほとんどどこでも携帯電話で支払いを済ますことが可能だ。

 
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モバイル決済は今やあたら前のライフスタイルに
中国インターネット情報センター(CNNIC)が公布した「第37回中国インターネット発展状況統計報告」によると、2015年にモバイル決済を利用したことがあると回答したインターネットユーザーは3.58億人に達した。これは中国のインターネットユーザー全体の半数を超える数字で、前年比64.5%の増加だ。さらに「ウォールストリートジャーナル」によれば、15年に中国人がモバイル機器を利用して行った支払及び振込の総額は16.4兆人民元で、14年の約2倍、13年の12倍以上に達した。

 多くの中国人が日常的に使用するデバイスをパソコンからスマホに一斉に乗り換えた時と同様に、今、その支払習慣も一気に変化を遂げつつある。支付宝と微信支付を利用している人の数は数億人規模に達し、Apple PayやSamsung Payも中国市場への参入を果たした。国内の小米(シャオミ)、華為(ファーウェイ)等の地場系スマホメーカーもモバイル決済市場に力を入れている。16年のモバイル決済市場は更に大きな成長が見込まれ、競争の激化も予想されている。 (続)

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