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「西湖」で有名な浙江省・杭州のコンビニ事情
多種多様なサービスとデリカ類の充実により成長著しい「快客」
2017年3月23日
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浙江省内に今後3~5年で1000店の目標を掲げる「快客」
 「2016年中国都市別コンビニ発展指数」(中国連鎖経営協会)で総合20位にランクインした杭州。上海に隣接する浙江省の省都だ。12〜13世紀の南宋朝時代には首都として栄え、マルコポーロが「世界で最も華やかな都市」と讃えたほど。市中心部にある世界遺産「西湖」が有名で、中国内外から毎年多くの観光客が訪れる。ネット通販最大手のアリババ本社があることでも知られている。

 杭州のコンビニ市場は、国内資本(内資)と外資がそれぞれ約半数を占める。内資では、上海農工商集団の「可的(KEDI)」、聯華傘下の「快客(QUIK)」、食品メーカー祐康傘下の「祐驛站(YOUEASY)」の3社が出店数100店前後と多く、華潤万家傘下の「Vango」が約60店で続く。浙江地元資本の「十足(C&U)」も11年末の初出店以来、順調に店舗数を拡大している。外資では台湾大潤発集団傘下の「喜士多(C-STORE)」が100店近くと最も多い。日系の「全家(ファミリーマート)」と「羅森(ローソン)」はいずれも12年に初進出し、現在の店舗数はそれぞれ約100店と約40店だ。

 今回はその中でも「快客」に注目したい。快客の戦略は品質向上を第一とし、他店のようにやみくもな店舗数増を良しとしない。過去5年間で、フランチャイズ店を中心に約半数に及ぶ業績の芳しくない店舗を閉店させた。この「取捨選択」により、単日の店舗平均売上は7000元前後まで上昇。前述の発展指数で指摘されている平均額5280元を大きく上回る。粗利益率は30%近く(タバコを含めると23%前後)。中国のコンビニでは、一般的な粗利益率は23~25%、純利益率が1.5~3%だ。デリカ類に強い店舗の場合、前者が30~33%、後者は1%前後となる。また、外資系店舗では粗利益率が35%前後に達するケースもあるが、こうした数字と比較しても、快客の数字はトップレベルと言える。

 快客の商品戦略はデリカ類を充実させること。毎日メニューを変えることで平日のランチ客を飽きさせない工夫をしている。オレンジジュースは、快客の国内サプライヤーがオーストラリアの二つの農場と提携し、1年中新鮮なオレンジジュースを提供できるようになった。デリカ類と常温食品の取り揃えも大幅に調整。デリカ類の比率を当初の10%から30%へと上昇させており、50%に達する店舗もあるほどだ。

 サービスの充実も抜かりない。微信プリンター、カプセルトイ、各種モバイル(スマホ)決済への対応、Wi-fi、携帯電話充電コーナーなど多種多様なサービスを提供。バス乗車カードのチャージサービスの利用額は、杭州の50の直営店において1年で10万元/月から100万元/月へと飛躍的伸びを示した。また、百度(Baidu)や新口碑(koubei)など大手ITサービス企業とも提携し、オンラインでの出前サービスにも乗り出した。現在アプリで掲載している商品数は200件に及んでいる。

 フランチャイズ店のモデルケースとして、テーマ型店舗にも積極的に取り組んでいる。特色あるのは創業園に今年6月に開店した上寧店だ。裸眼3Dウォールアートを店舗内外の装飾に採用、入口の両側にはフランス式花壇を設置し、可愛らしいカントリー風を演出した。出前、大衆点評、美団などのスマホと連動したO2O機能のほか、挽きたてコーヒー、豆乳、フレッシュオレンジジュース、弁当・おにぎり類、寿司・サンドイッチ、スイーツ、フルーツ等の新鮮な食品を多く提供し、評判は上々だ。

 内資と外資がひしめき合う杭州において、快客は16年も好調を維持。4月の売上が前年同月比40%増を記録。全体でも平均30%増と勢いに陰りがない。浙江省内に今後3~5年で1000店の目標を掲げている同社の動向に注目したい。

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