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台湾式レトロ焼餅が中国人の胃袋を虜に
中国式ファーストフードの革命児「桃園眷村」(1)
2017年4月10日

 

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「桃園眷村」の内装はレトロ感満載
  台湾にある「眷村(けんそん)」という居住区を知っているだろうか。ここは、中国本土から流れ着いた国民党の軍人家族が共同生活していたエリア。台湾全土に900前後あり、なかでも北部の桃園県に多くが集中している。時代を経て、今、中国でその名を冠したレストラン「桃園眷村」が人気を博している。

  店内は白を基調とした内装。ヒノキ材を使ったシンプルなデザインの机や椅子、家具が絶妙に調和し、清潔感に溢れている。昔のブラウン管テレビやステレオ、置き時計などがあり、レトロ感も満載。壁には台湾の「国民党時代(1980年代頃まで)」によく使われた愛国教育のスローガン「荘敬自強、処変不驚」などの文字が、党のイメージカラーである青色の繁体字で書かれている。国父・孫文のイラストが印刷された大きな鏡も架けられ、まるで一昔前の台湾にタイムスリップしたかのようだ。

  メニューは焼餅、油条、豆漿(豆乳)など。焼餅は小麦粉を捏ねて薄く伸ばした生地をカラッと香ばしく焼いた中華風パン。油条はそれを細長くして油で揚げたもの。台湾では、油条や卵焼きなどを焼餅で挟んで食べるのが朝食の定番だ。このレストランでは、ベーコンやチーズを挟んだものも提供。豆漿は「熱」「温」「冷」の3種類から選べ、砂糖入りのものからラー油とネギを入れた「塩」バージョンもある。

 
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豆乳や焼餅を作る子供向け体験コーナーも設置
台湾旅行中に「台湾グルメ」の虜になった中国人オーナーが中国での事業化を決意。台湾からコンサルタントを招き、コンセプトからメニュー、店舗設計、接客など、台湾式の管理を徹底し、内装にもこだわった。各店舗はそれぞれ異なるコンセプトの内装が施され、レトロを基調としたものからシンプルなものまで様々。メニューも少しずつ個性を変えた品揃えを用意している。例えば、上海の虹橋南豊城モールの店内には豆乳を絞る石臼が並べられ、豆乳や焼餅を作る子供向け体験コーナーも設置。昨今流行りの「コト」消費や「子女教育」の要素が取り入れられている。上海泰州路店では、この店限定の金魚ワンタンや鴨血春雨スープが楽しめるなど。

  桃園眷村の第1号店は上海泰州路店。2014年12月に営業をスタート、唯一の24時間営業店でもある。その他の支店の営業時間も朝7時から深夜2時半までで、「夜宵(夜食)」需要も取り込む。北京の三里屯店は、バー帰りの客が深夜に行列を作るほどの盛況ぶり。現在、上海(10店舗)に加え、北京、成都、武漢、杭州、深セン、重慶にも出店済みだ。

  桃園眷村の人気のきっかけとなったのはスマホSNSの微信(ウィーチャット)上で爆発的にシェアされたあるコラムだ。「彼はLV(ルイヴィトン)のすぐそばに焼餅と油条の店をオープンした。人気は瞬く間に外灘(バンド)中に広がり、網紅(ネット上で絶大な人気を誇る有名人)たちはこれを味わうために2時間並ぶことも厭わない」。この情報は多くの微信ヘビーユーザーのシェアと推薦を得て、7日間で580万回もクリックされ、月間の売上は56%と爆発的な伸びを示した。なかでも上海日月光店の売上は180万元、北京三里屯店は160万元に達した。(続)

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