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16年の総括から考察する17年の中国消費トレンド分析 (14)
リアル店舗の逆襲 (1)
2017年5月8日

 

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ECに対抗するため、ランドマーク的な高級モールも賃料が下落傾向に
 EC(電子商取引)の台頭がリアル店舗にとって大きな試練となって久しい。しかしECの発展は一段落し、その運営コストも上昇しつつある。消費者も体験型消費と良質なサービスを求めるようになってきており、2016年からは、実店舗の再起のチャンスが到来している。

 前述のように、アリババの馬雲(ジャック・マー)も「新たな小売業」というコンセプトを提唱し、実体型商業との提携を進めている。O2O型の生鮮スーパー「盒馬鮮生」、 コンビニアプリ「閃電購」、家電量販店の巨頭・蘇寧への投資や、商業不動産ディベロッパー鵬欣と提携・開発した体験型商業施設、KFCの買収などがその例だ。16年末には江蘇・浙江地区最大のスーパー「三江購物」も買収。また天猫の新たな実店舗「就試試衣間」もオープン、天猫上の服飾、靴、バッグ、コスメ等の人気ブランド100社を集結させている。 馬雲のオフライン実店舗の重視は、実店舗復活を象徴する出来事と言える。

 ECはここ数年劇的な発展を遂げてきたが、そのコストも大きく上昇、今や実店舗を上回るほどになった。天猫を例にとると、人件費11%、天猫手数料5.5%、宣伝コスト15%、配達12%、アフターサービス2%、財務コスト2%、光熱水道料金・家賃2%。これに税金などを加えると、粗利率が50%以上でなければ経営を維持することができない。垂直型ECも同様だ。16年には40社あまりのEC企業が倒産。ECの運営コストが増加する一方で、実体商業界では賃料が下がり、ランドマーク的なショッピングモールでも大きなディスカウントが行われている。恒隆、華潤、瑞安といった高級モールも例外ではない。

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ネット書店大手「当当」が体験型リアル店舗をオープン
 オンラインとオフラインのコストの差が縮小するにつれ、リアル店舗における展示や体験の効果が再び注目を浴びている。多くのメーカーが大型の体験型店舗をオープン、売上よりも消費者のブランドに対する認知度と好感度を高めることに重点を置いている。アリババだけでなく、ネット書店「当当」も相次いで実店舗に投資、その目的は消費者により多くの新製品をアピールし、 オンラインでの販売に繋げることにある。当当の実店舗1号店は長沙にオープン、今後3年で1,000店を展開していく予定だ。

 ネット販売で人気を得たスナックブランド「三只松鼠」の実店舗は、オンラインよりも高い売上を誇る。 16年に安徽省の蕪湖に1号店をオープン、1日の平均売上高15万元、1週間の来店者数5万人超、年間売上も1,000~1,200万元を見込んでいる。今年は物流センターのある10都市で100店を展開予定だ。オンラインのみでの顧客増に限界が見えるEC業界にとって、オフラインの体験型店舗は、参戦しなければ落ちぶれること必至の新トレンドとも目されている。

 従来型の実店舗はどうだろう。16年に注目された出前代行アプリは実店舗の売上増に大きく貢献した。配達可能エリアも大きく広がり、業務量も多いところでは数倍増加した。利潤の70%をモバイル出前代行アプリを通じた注文が占める店舗もあるほどだ。多くの実店舗が出前アプリを通じてオンラインユーザーをオフラインに取り込むことに成功し、収益を上げている。

 匠の精神、ムード、趣味などソフト面の要素、細部へのこだわりやサービスが今後の実店舗発展の鍵とされ、すでに多くのリアル店舗で採り入れられつつある。中産階級の増加により、カルチャー、オリジナリティ、体験型、レトロといった概念は、すでに価格よりも重要な要素となった。

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