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“網紅”経済の視点で見る中国の消費アップグレード (7)
網紅グルメの台頭は日本企業にとっても商機に
2017年6月29日

消費者のリピート率維持が網紅最大の課題

 

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数年前に大流行した「徹思叔叔芝士蛋糕(てつおじさんのチーズケーキ)」はすでに人気は下火に
  網紅グルメが見た目、ムード、SNSでの拡散など成功のための要素をクリアしたとしても、その先にありがちなのは、すぐに飽きられてしまうという問題だ。毎年いくつかの商品(店)が大きな話題となり、瞬く間に人気グルメに成長したかと思うと、驚くほど早くに忘れ去られていく。

  その典型的なケースが、数年前に大流行した「徹思叔叔芝士蛋糕(てつおじさんのチーズケーキ)」だろう。 速すぎる出店ペースと類似ブランドの参入が大きな打撃となり、今やほとんど話題にのぼらない。また、かつて8ヶ月で52店をオープンさせ話題を呼んだレストランチェーンの「水貨餐庁」も、北京、福州、寧波等の店舗が相次いで閉店の憂き目に遭っている。最高時には評価額が12億元にも達した煎餅果子(葱や卵を巻いた朝食用のパンケーキ)専門店「黄太吉」も、現在は半数以上の店舗が閉店に追い込まれていることを公表。オリジナル料理の「雕爺牛腩」も、業績が最高時から80%近く減少したという。

  消費者のリピート率の低さは網紅グルメの大きな潜在リスクの1つだ。90後の若年消費者は、生活のリズムがスピーディで、新鮮さを追求する一方、飽きやすいという特徴も持っている。 どのようにブランド力を高め、消費者のリピート率を維持するかが、網紅経済の最大の課題と言えるだろう。

網紅グルメの台頭は日本企業にとっても商機に

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「熱しやすく冷めやすい」が90後世代の若年消費者の特徴
  若い世代は潜在的に、行列に並ぶことや皆と同じものを食べることで「一体感」を感じ、一種のコンセンサスを得たいという傾向を持っている。そうしたムードや満足感に共感を覚えた消費者が、SNS上で自ら進んで情報をシェアするよう促すだけでなく、著名人やKOL(Key Opinion Leader:インフルエンサー)を起用することで、ブランド認知及び拡散の所要時間は大きく短縮化された。つまり、網紅グルメの誕生は、SNSとう群衆心理が見事にマッチして生み出された現象といえる。

  また、網紅グルメの台頭には、中国消費のアップグレードと中産階級の消費力上昇が背景にある。網紅レストランの多くは、立地から内装、サービスなど細部にも神経を行き届かせている。ミルクティーひとつを取っても、砂糖や氷の量が選べ、カップには飲むのにちょうど適した温度や美味しい飲み方などを記載。従業員の接客やイメージづくりにも高い要求を課している。

  これら網紅店は、消費者のレストラン業界に対するこれまでの認識を大きく覆し、レストランを単に「食べる」ための場所ではなく、ユニークなサービスや特徴ある環境を通して、今まで得たことのない「体験」を楽しめる場所に生まれ変わらせた。

  リピート率の上昇やブランドの存続期間を延ばすことなど網紅グルメの課題は確かに多々あるが、一方で、日本企業にとっても、中国市場でのチャンスが広がっていると捉えるべきではないか。訪日インバウンド客による情報のシェアだけでなく、ネットで容易にアクセスできる日本のクチコミ人気店の情報は、スマホやSNSで一気に広がる可能性を秘めている。課題やリスクばかりに目を向けて、折角の市場機会を逃すことがないよう、日本企業の勇気と奮闘を期待せざるをえない。

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