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シェア自転車に続く都市のニューフェイス「カーシェアリング」(6)
カーシェアリングがシェア自転車のように急成長しない要因とは
2017年9月5日

 

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「TOGO」はコスト削減のため、4S店や自動車メーカーからリース型融資という形式で車両を調達
  国の政策による手厚いサポートを受けているカーシェアリングだが、シェア自転車とは異なり、参入障壁が高く、企業は市場規模により車両、ナンバープレート、駐車場など各要素で影響を被りやすい。実際、発展過程において様々な障害に直面しており、地方政府の積極的サポートが不可欠だ。

  まず、カーシェアリングは非常にコストが高い。

  現在、中国のカーシェアリング市場の運営モデルは2つに分類できる。

  一つは運営企業が車両を所有しているヘビーアセット型。もう一つは運営企業が車両を所有せず、遊休状態のマイカ―資源を活用するP2Pライトアセット型モデルだ。

  現在、ほとんどのプラットフォームは、前者の自社車両を使用するヘビーアセット型モデルを採用している。そのメリットは車両の管理がしやすい点。
しかし、車の購入から駐車料金の支払い、ガソリン代又は電気代、保険料、道路料金、日常のメンテナンス費用など、プラットフォームの立ち上げには莫大な資金が必要だ。運営維持のコストも大量の資金が必要で、そのハードルは非常に高い。これもカーシェアリングがシェア自転車ほど爆発的に普及しない要因の一つと言える。

  車両の購入コストが高いため、現在カーシェアリング企業の70%は自動車メーカーをバックグラウンドに持つのも納得がいく。

  例えば盼達用車は、国産自動車メーカーの力帆を背景に持ち、使用する車種は主に力帆330EVで、価格は約5万元だ。

  TOGOはコスト削減のため、4S店や自動車メーカーからのリース型融資という形式で車両を調達。車両の購入コストが高いため、投入する車両台数を増やせない企業は、ステーション数も限られてしまう。結果的にユーザーにとっても利用が不便となり、規模も拡大するのも困難となっている。

  もう一つの大きな制約要因となっているのが駐車スペースの問題だ。

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「car2go」の専用駐車スペース
  シェア自転車がなぜユーザーのリピート率を高められたのか?それはいつでも、どこでも借りて返せるという利便性を実現できたためだろう。
しかしカーシェアリングの場合、「ラスト1マイル」が大きな問題となって来る。

  現在、シェアカーの95%がEV(電気自動車)であり、返車の際は指定の駐車スペースに返却、設置されているチャージャーで充電するか、スタッフがバッテリーを交換しなければならない。

  ところがこのA地点で借りてB地点で返却するというモデルの場合、ユーザーにとって本来の目的地に到達できないという事態を招きやすい。最終的に地下鉄やシェア自転車による乗り継ぎが必要になることも多く、このことがユーザーの体験値を下げてしまっている。
一方、ガソリン車の場合、駐車問題に関しては比較的柔軟性が高い。

  car2goはシェア自転車に似た自由型モデルを採用、どこでも借りて、返却することが可能だ。利用し終わった車両はcar2goの契約駐車スペースに駐車しても良いし、政府管轄の公共駐車スペースを利用しても良い。公共の駐車スペースに駐車した場合も専用の駐車スペースを利用した場合も、駐車料金は無料だ。

  TOGOも自由駐車モデルを採用、ユーザーは合法的な駐車スペースならどこでも置いておくことができる。もしステーションから1km以内であれば5元のサービス料が徴収され、それ以外でも25元以上徴収されることはない。

  どこでも無料で駐車できるとはいえ、実際には、都市の中心部など、時間帯によって駐車スペースを探すことは至難の業だ。このため、専門の駐車スペースが不足し、返車地点を自由化しようにもできない企業もある。結果、ユーザーにとってもこれが利用の大きな妨げとなっている。

  さらに、カーシェアリングは多くの場合、新エネルギー自動車を利用しているため、チャージャー等の設備の普及度合いが、その発展にも直接深く影響する。

  北京、上海、広州、深圳などナンバープレートの取得を規制している都市では、新エネルギー自動車も同様に制限しており、カーシェアリング業界の規模拡大にとって大きな障害となっている。

  例えば、2016年の自動車ナンバー発行総量規制の影響から、北京市ではタイムシェア用小型乗用車のナンバープレートが2000枚しか発行されず、このラベルを取得できたのはわずか5社のみ。

  こうした制約が、カーシェアリングがシェア自転車のように急速に普及できない大きな要因となっている。(続)

 

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