中国のビッグデータ産業は、経済の発展した地区に集中する傾向があり、北京、広東、上海がその中核地区となっている。これらの都市では情報技術産業のインフラが整っており、産業チェーンも確立されている。また、規模も拡大を続けている。
この他、貴州、重慶、武漢を中心とするビッグデータ産業園も、政府の政策サポートの下、地区の経済発展を主導する役割を果たしている。
(1) 京津冀(北京、天津、及び河北省)地区
「中国のシリコンバレー」と称される北京の中関村を中心に、天津及び河北地区へと広がりを見せ、現在すでに「中関村で技術を開発、天津で設備を製造、張家口及び承德にデータを保存」という発展モデルが形成されている。
中関村地区には中国のビッグデータ企業が最も多く集中しており、清華大学等の卒業生が中国ビッグデータ創業の中心的存在となっている。2016年、京津冀の三地域におけるビッグデータ企業数は875社に達し、2009年の350社の倍以上に成長した。
「十三五」期間中の中関村の目標は以下のとおり。
①ビッグデータのトップレベル人材100人と、100の創業チームの集積
②HCI(Human-Computer Interaction)、AI(人工知能)、VR等の技術の活用
③5つの国際研究機関と、5つの取引評価機関の設立
④30のデータシェアプラットフォームと20の創業・インキュベーションプラットフォームの設立
⑤3つのビッグデータ産業園設立と、50のビッグデータ産業プロジェクトの実施
⑥キーテクノロジーを有する企業600社及び応用力を持つ企業6,000社の育成
(2) 珠江デルタ地区
広州、深圳の電子情報産業の優位性と、両都市の国家スーパーコンピューターセンターとしての集積作用を生かし、騰訊(テンセント)、華為(ファーウェイ)、中興(ZTE)等の中核企業のリードの下、ビックデータ集積・発展が一大トレンドとなっている。 現在広東省のデータ保存量は約2,300PBに達しており、その規模は巨大だ。
(3) 長江デルタ地区
長江デルタ地区ではビッグデータとスマートシティ、クラウドコンピューティングが密接に結びついている。
上海市は「上海ビッグデータ研究及び発展推進の三年行動計画」を公布。
南京市ではスマートシティの積極的発展を目指し、ビッグデータの都市管理及び住民サービス領域での応用を推進している。
杭州市は、アリババグループ傘下の「阿里クラウド」に代表されるクラウドサービス技術設備の提供企業や、 華為に代表されるクラウドプロジェクト及びクラウドサービスの提供企業、さらには数多くのクラウド応用企業を擁し、クラウド関連の産業チェーンが大きな発展を続けている。浙江省にはネット大手のアリババや網易(NetEase)、監視カメラ・レコーダーメーカーの海康威視(HIKVISION)や大華(DAHUA)等の著名企業を含む337のビッグデータ企業が集中している。
(4) 中西部地区
重慶市は「重慶市ビッグデータ行動綱要」を公布、国内外の業界主要企業の誘致を行っている。
武漢市は2015年に華中地区初のビッグデータ取引所となる長江ビッグデータ取引所を設立した。
西安市は今後5年以内に西部地区最大のインターネットビッグデータセンターを建設する計画だ。
貴州市は中国ビッグデータ産業のイノベーションテスト地区として、貴陽高新区を設立。多数のビッグデータ関連企業を誘致した。現在ビッグデータ中核業態企業39社、関連業態企業383社、派生業態企業409社が集まっている。16年における上記企業の業務収入は1,264億元に達した。2020年には貴州市のビッグデータ関連産業の規模は4,500億元に達すると予測されている。
また、2013年から14年にかけて中国電信(チャイナ・テレコム)、中国移動(チャイナ・モバイル)、中国聯通(チャイナ・ユニコム)の三大電信会社が相次いで貴州の国家級新区である貴安新区にビッグデータセンターを設立。貴州は全国で唯一、三大電信会社のデータセンターが集中する地方都市となった。この他、中関村貴陽科技園、富士康第四代産業園も設立された。
国家信息中心が政策環境、人材状況、投資の集中度、イノベーション産業、産業発展及びインターネットユーザーの信用度等の指標をベースに、全国31の省・市に対して行った総合評価によると、トップ10は北京、広東、上海、江蘇、浙江、山東、貴州、重慶、福建、四川の順だった。
(表3:各省・市のビッグデータ発展指数トップ10)
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