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【第296回】 天猫と京東に挑む老舗ネット企業
越境ECで存在感増す網易(NetEase)
2017年11月15日
越境ECで存在感を高める「網易考拉海購(Kaola.com)」
越境ECで存在感を高める「網易考拉海購(Kaola.com)」
 会報誌10月号では、巻頭特集で越境ECプラットフォームの「網易考拉海購(Kaola.com)」を取り上げました。

 日本でも独身の日(11月11日)の「双11」セールなどで、近年大きな話題になっている中国越境EC。技術的には、単に中国の消費者が海外のサイトから直接商品を購入するだけなので、別に何か特別な仕掛けや仕組みが誕生したわけではありません。しかし、中国でなぜこれほどまでに人気となり、多くのユーザーがこぞってわざわざ越境でモノを買おうとするのか。

 その理由として、越境で商品を持ち込む(郵送含む)“個人”に対して、10年に中国政府が導入した特別枠の「行郵税」や、13年に上海を皮切りに各地で設置された自由貿易試験区などにより、海外商品購入の機運が高まったとも言えるでしょう。

 しかし、一番のきっかけは、12年末に発足した第2次安倍政権のアベノミクス政策による「円安」。1円当たり約13元から20元にまで一気に進んだ「人民元高」により、日本の商品が実質的な“大幅値下げ”状態になりました。海外配送料を足しても、中国で買うよりも割安になり、日本から直接買う「海淘(海外+淘宝)」が中国で流行り始めました。

 こうした風潮は、中国消費者の所得水準向上に伴う「消費昇級(アップグレード)」トレンド、つまり少々割高でも、より良いモノを求めるニーズを背景に、ますます助長。中国で流通する商品だけでは満足できない消費者が、越境ECで海外商品を気軽に購入するのが日常茶飯事になりました。

 もちろん、この裏には整備され便利になったインフラ、つまりプラットフォームの存在が欠かせないのですが、その最たるものとしてアリババ系「天猫国際」の貢献は計り知れないでしょう。中国B2C市場で圧倒的なシェアを誇る天猫(Tモール)の越境版。越境ECでも断トツのトップかと思っていたのですが、iiMedia Research(艾媒諮詢)の発表したレポートで、同分野のトップシェアはなんと「網易考拉海購」だったとのこと。

 無料メールサービスの「163.com」では有名な「網易(NetEase)」ですが、最近はほとんど耳にしてこなかったポータルサイト。その網易がどうして突然にと青天の霹靂でした。網易がいかにして天猫や京東(JD.com)の牙城を切り崩したのか。その秘訣と戦略について分析しました。
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