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広東省消費現場視察レポート (26)
【潮州/汕頭】中国三大商人の一角、名だたる優秀な経済人を排出した華僑の故郷
2017年11月13日

中国三大商人の一角、名だたる優秀な経済人を排出した華僑の故郷
経済特区に選ばれながら、消費現場でも低迷が続く
 

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粽球は潮汕地域の特色ある小吃
  中国では、潮州と汕頭は合わせて「潮汕」と称される。厳密には、潮汕には潮州、汕頭、そして揭陽の三市が含まれる。中国の東南の沿海部に位置し、広東省と福建省の境界部に位置している。

  三市は古の昔から地理的にも文化的にも密接なつながりを持ってきた。中原(河南省)を起源とし、土着と海外の文化が入り混じった潮汕文化を特色とする。また、潮汕地方の方言は漢字1つに8つの音があるなど、非常に学習しにくい言語といわれている。

  「潮汕商人」と言えば、晋商(山西省)、徽商(安徽省)と並ぶ中国三大商人であり、“中国のユダヤ人”と揶揄されることもある。

  牛肉丸、粿条、蚝烙、粽球、腸粉、春餅等の特色ある小吃は、全国にその名を知られている。 潮州菜は中華料理の中でも高級料理の代表格であり、ここ数年中国全土で人気を博している牛肉火鍋もルーツはここ、潮汕地区だ。

  2016年の汕頭、揭陽、潮州のGDPは、それぞれ2,080.54億、2,032.61億、976.83億元。省内では12位、13位、18位で、21都市中半分より後ろの方に位置している。

  この数字には、多くの人が驚きを覚えるだろう。なぜなら汕頭市は深圳、珠海、厦門に続く中国第4の経済特区(1981年)だからだ。深圳は言うまでもなく、厦門や珠海と比べても、この値は相当低く、特区とは思えないほど。汕頭の空港は老朽化が進み、街も古びている。 タクシーはメーターを起こさず、相乗りもし放題、文化的にも遅れていること甚だしい。

 
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汕頭の旧市街区は荒れ果てた建物ばかり
筆者は非常に期待を持って旧市街区にあるランドマーク「小公園(中山記念亭)」を訪れた。そこは30年代に汕頭に港が出来た時代最も賑やかだった地域で、パリの街を彷彿とさせる放射線状に延びる道路と中国と西洋の文化を融合させた騎楼建築で名高かったためだ。

  ところが、筆者が目にしたのは荒れ果てた建物と、油のシミやさび付いた鉄窓、雑草の絡みついた今にも倒れそうな廃墟だった。 店舗の多くは閉店状態で、一部の食堂のみが細々と営業を続けている。その荒れ様は辺境の農村でも、「これよりマシかもしれない」と思えるほどだった。

  汕頭が経済特区であるにもかかわらず、順調な発展を遂げなかった理由に思いを巡らせてみると、その1つに、01年に摘発され、多数の汕頭企業が手を染めた不正発票(領収書)発行による巨額の脱税事件があげられる。これにより汕頭企業への信用が大きく失墜し、国内外の企業がビジネスや投資を敬遠したとされている。

  また家族や親戚など「血縁」による“関係(コネ)”を重視する特徴が強いのも汕頭の特徴で、外地からの人やモノを積極的に受け入れることが少なかった。外地の人もそうした強い結束に嫌気がさし、現地での商売を諦める傾向もあったようだ。

  一方、ここは「華僑の故郷」と称され、数多くの華僑がここから東南アジアを中心に海外へ移住し成功を収めているのも事実だ。タイの巨大財閥CP(チャロン・ポカパン)グループの創業家や香港の富豪で最大の企業集団・長江実業グループ創設者の李嘉誠、さらには微信やQQでお馴染みのテンセント(騰訊)CEOの馬化騰など、名だたる優秀な経済人を排出。

  しかし、このように外地で大成功を収めた彼らもまた、地元経済への投資にはそれほど積極的ではないようだ。観光名所の修復や学校教育への寄付などは、慈善事業にとどまっており、いかに現地への溶け込みが難しいかを物語っているといえるだろう。

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