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新小売潮流下の物流競争~京東物流VS阿里巴巴菜鳥網絡 (7)
コールド物流が次の競争の争点
2018年4月24日
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京東のコールドチェーン三輪車
 生鮮食品のネット販売が過熱するに伴い、コールド物流チェーンが、京東物流と菜鳥網絡の次の競争の争点となりつつある。
 
 現在、京東物流は全国に10ヶ所の生鮮冷蔵倉庫を擁し、深冷層(−30℃)、冷凍層(−18℃)、冷蔵層(0~4℃)、 温度調整層(16~25℃)の4つの温度層により、商品の品質を保証。同時に冷蔵、冷凍、恒温の3つの保温が可能なコールドチェーン輸送車及びコールドチェーン三輪車等の設備のほか、コールドチェーン保温箱、専門冷媒(ドライアイス、アイスバー、アイスパック、アイスバッグ)等の素材も完備、全行程をフルカバーした冷蔵輸送を実現している。

 2016年12月時点、京東物流の生鮮冷凍冷蔵配送は、全国60の大中都市をカバー、恒温配送は243都市に配達が可能となっている。配送時間も極めて短く、主要都市では「211配送」(当日の11時前に注文すれば、午後4時までに配達。午後4時までに注文すれば、翌日午前11時前に配達)や、夜間配送サービス(午後7時~10時)、時間指定サービス(配送時間を2時間幅で指定)等も実現した。

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京東のスマート保温箱は、スマート温度調整システムを導入
 京東物流はさらに、最近、全国128の都市に20万箱のスマート保温箱を設置。 コールド物流の全過程におけるスマート温度調整システムを導入している。

 スマート保温箱は保温のみならず、GPSや即時温度測定機能などを備え、長時間保温が可能なばかりでなく、京東クラウドを通じて、食品の場所や製品の温度、その他の関連情報をオンタイムで知ることができる。

 消費者は自分のパソコンやアプリから購入した食品の輸送状況、温度や位置を確認することが可能だ。現在、スマート保温箱は主にヨーグルトや熱帯フルーツ、海産物や冷凍肉など、温度管理が必要な冷凍・冷蔵食品に利用されている。

 17年の双11セール中、京東物流の生鮮倉庫からの輸送・発送貨物量は、前年比で236%と大幅に増加した。20年には倉庫面積の拡大とスマート物流システムの成熟に伴い、コールド物流の1日の処理能力は、1000万件に達すると見込んでいる。

 一方、菜鳥網絡のコールドチェーン物流の特徴は、主にコールドチェーン倉庫・配送リソースのマッチングにある。

 各企業を自己の物流プラットフォームに取り込むことで、コールドチェーン物流の各段階の品質向上を実現。実際の運営においては、コールドチェーン倉庫は自社で建設し、幹線及び配達は、パートナーに担当させている。

 倉庫サービスの面では、店舗がパッキング材料のカスタマイズを行うことが可能。提供商品の消費期限管理、出入庫予告、ロット管理、出入庫管理、果物の初期加工等のサービスも提供している。

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産地近くに設置された菜鳥のコールドチェーン倉庫で、さくらんぼを選別している様子
 「山東省・煙台産の新鮮な産地直送さくらんぼ」を例にとろう。

 菜鳥網絡は、煙台の産地にコールドチェーン倉庫を置き、農家や販売者のさくらんぼをここに輸送、選別したうえで、保管する。その後、提携パートナーのコールドチェーン輸送車がさくらんぼを倉庫から北京、上海、武漢、広州などの地区倉庫に輸送する。

 最後にこれらの地区倉庫から、現地の数十の配送業者や生鮮専門の宅配便業者が、消費者の手元に商品を届ける。この種のコールドチェーンモデルでは、さくらんぼが産地から消費者の手に渡るまで48時間以上かからない。テストでは、配送途中でのさくらんぼの腐敗率はわずか2%以下だった。

 菜鳥網絡もコールドチェーン物流会社、例えば「易果生鮮」等に出資し、自社の能力強化に努めている。

 易果生鮮傘下のコールドチェーン物流プラットフォーム「安鮮達」では、冷蔵倉庫、コールドチェーン幹線輸送、コールドチェーン短距離接続輸送、安全品質検査、パッキング、分別加工、コールドチェーン宅配、店舗配送などの一体型コールドチェーン倉庫物流サービスを提供。

 現在は北京、上海、広州、武漢、西安、天津、青島、深圳など15都市24倉庫の全国展開戦略を完成、3つの温度層のコールドチェーン配送システムを完備している。配送面では全国300あまりの都市をカバー。

 現在天猫、蘇寧、易果の生鮮部門の配送を担当しているほか、天猫プラットフォームの第三者生鮮販売者にも、専門的なコールドチェーン物流配送サービスを提供している。2020年には2000億元近い生鮮製品の宅配を実現し、生鮮宅配市場の三分の一のシェアを占めると見込んでいる。

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