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【第330回】 中国人視聴者を意識、各社がCM合戦
W杯で存在感を増した中国企業
2018年7月18日
 6月14日から約1カ月、中国でも最高の盛り上がりを見せたサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会が、フランスの20年ぶりの優勝で幕を閉じました。上海に来てから約14年になりますが、今回ほど盛り上がったW杯はなかったように思えます。

 実際、中国内の視聴者数が最終的に10億人を突破したと見込まれています。これは2010年の3.29億人、2014年の2.52億人から大幅アップ。その背景には、今回のW杯ではCCTV(中国中央電視台)のほかに、動画視聴サイトの「優酷(youku.com)」と「咪咕(miguvideo.com)」にも独占放映権が与えられ、モバイル端末での視聴が増えたことも関係しているようです。

 こうした膨大な数の視聴者をターゲットに、CCTVでは多くの広告が流れました。特に目立ったのは国産スマートフォン(スマホ)メーカーでしょう。人気タレント・呉亦凡を起用した小米(シャオミ)、AI(人工智能)機能をアピールしたvivo(ビボ)、そしてブラジルのネイマールが出演したoppo(オッポ)の3社。

 また、蒙牛乳業やアディダスでメッシが、長城汽車の高級SUVブランド「WEY」でクリスティアーノ・ロナウドなど、中国でも知名度の高い人気選手が出演する広告も数多く流れました。

 一方、ここぞとばかりに露出を高めたのがスマホアプリの各種サービス会社。中古品売買(フリマ)の「転転」、中古車売買「瓜子」と「優信」、グループ購入「拼多多」、旅行情報「馬蜂窩」、不動産情報「貝殻」、人材仲介「BOSS直聘」、Q&A「知乎」など。特に転転と瓜子、優信以外は、普段の生活でほとんど広告など目にすることのなかったアプリの数々です。

 こうしたアプリ各社の広告はいずれも軽快なリズムやメロディで、何度も同じセリフを繰り返す “洗脳”的な手法を採用。何度も聞いているうちに、どこか脳裏にそのメロディが焼き付いて、否が応でも記憶されます。もう少し“クリエイティブ”で映像効果の高い広告のほうが……と思いながらも、一度に多くの視聴者に覚えてもらうには、この方法が一番効果が高いのでしょう。

 一方、日本企業で目立ったテレビ広告は、日産くらい。スポンサー企業として名を連ねる日本企業はゼロ。セネガル戦で、グラウンド周囲の広告になぜか東芝のテレビブランド「レグザ」が表示されましたが、それもHisense(ハイセンス)の傘下だったからとのこと。以前はソニーやキヤノン、セイコーなど多くの日本企業の広告を目にしたものですが……。
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