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商業化が進む中国eスポーツ産業が急成長 (5)
人気ゲームを続々と排出した騰訊が業界をリード
2018年10月30日

人気ゲームを続々と排出した騰訊が業界をリード
人気イベントのスポンサー料も高額化

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網易遊戯(ネットイース・ゲーム)はeスポーツ業界のトップ企業の一つ
  eスポーツへの関与は、政府ばかりではない。ネット業界の大手各社も、eスポーツ業界の発展に積極寄与している。

  巨人網絡(ジャイアント・インタラクティブ)は、アリババ傘下の「阿里体育(Alisports)」と提携。17年には、その中心的競技イベントとなったモバイルゲーム「球球大作戦(Battle of Balls)」のプロリーグ「BPL」の存在感を、大幅にアップグレードした。

  レジャー競技をテーマとするモバイルゲームの新モデルを構築。数多くの日用品メーカーがスポンサーに名を連ね、4億人のプレイヤー数と3億回以上のリーグ視聴回数を実現した。

  英雄互娯(ヒーロー・エンターテインメント)も、自社開発と代理による多くのモバイルゲームで、「HPL(英雄リーグ)」を新設。設立して3年が経った今、4億人超のユーザーを蓄積している。

  17年には香港でアートを前面に出して人気の商業施設「K11」と戦略提携契約を締結。オフラインのeスポーツスタジアムや、eスポーツをテーマにしたレストランなどを共同でオープンするなど、eスポーツと他業界との融合を目指している。

  網易遊戯(ネットイース・ゲーム)は、18年に10億元を投入して、eスポーツ娯楽システムを構築。比較的ハードルの低いベーシック競技のイベントを通して、より多くの人々に参加を促し、ユーザー層の拡大に努めている。 また選手やクラブに対するサポートを強化、全国38都市にオフラインの会場を設置した。

  トップ企業の中でも、特に注目に値するのは騰訊(テンセント)のeスポーツ事業部門である「騰訊電競(テンセント・eスポーツ)」だ。

  国内外の優れた競技型ゲームの開発企業に出資または提携することで、eスポーツコンテンツのIP(知的財産、ここではゲームの版権を指す)元を掌握。「英雄聯盟」の開発元であるRiot Gamesや「皇室戦争」の開発元であるSupercellなどに出資している。

  一方で、人的及び物的リソースを大規模に投入し、各地で一般イベントを開催。また、それら全過程を実況中継するなど、競技イベントの体系化を図った。「英雄聯盟」の都市別英雄争覇賽(大会)、LDL(LOL Development League)、LPL、「穿越火線」の百城(百都市)聯賽、CFDL、CFPLなどはその一例だ。

  現在、テンセントは11の大型eスポーツ競技イベントを主催、一般レベルのイベント数は230都市で、2万941回に達している。過去数年間にテンセントが出品した「英雄聯盟」や「王者栄耀」は、eスポーツ人気の立役者といっても過言ではない。

  「英雄聯盟」のプロリーグ「LPL」と「王者栄耀」のプロリーグ「KPL」の競技イベントのライセンス料は、すでに億元単位での取引となっている。

  LPLの2017年の年間を通した実況放送の視聴者数は延べ100億人を突破、KPLもオフィシャル実況放送とイベントの視聴回数が90億回を超えた。 スポンサーにはベンツや国産スマホ端末のvivo、ロレアル、マクドナルド、浦東発展銀行クレジットカードなど、メジャー級のブランドが続々参入している。

  一方KPLのほうも、18年に最も高額となった単独スポンサー料が、5800万元に達している。これは一流のスポーツイベントに勝るとも劣らない規模だ。

  17年、騰訊電競が主催する競技イベントのスポンサー規模は前年比197%増、提携企業数も171%増となっている。

  最近、騰訊電競は「五ヶ年計画」を発表。1000億元規模の予算を投入して、eスポーツ産業を興すプランを打ち立てた。

  17年、騰訊(テンセント)は北京に初のeスポーツ産業センターを設立。今後、全国10箇所以上に同じような産業センターを建設していく計画だ。
同時にeスポーツ業界のリーディングカンパニーとして、絶大な指導力も発揮、数々の業界ルールや基準を制定・公布している。

  さらに、eスポーツが「深圳市2018年重点支持体育項目目録」に名を連ねるのにも尽力。9つの有名大学や教育機関と提携し、55科目のeスポーツ課程の設置に協力した。

  一方で、産業(サプライ)チェーンの川上から川下企業へも積極的に投資や支援しながら、業界の整備に努めている。

  最近では、実況プラットフォーム大手2社の「闘魚」と「虎牙」に数十億元レベルで投資、さらにVSPNへの投資ファンド組成も主導した。ジャカルタ・ アジア大会のデモンストレーション競技種目においても、テンセントのゲームが3席を占めている。

  中国eスポーツ業界のリーダーとして、テンセントの地位は当分揺るぎそうにない。

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