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【第344回】倹約志向やシェア経済が消費を変える?
中国でじわり広がる「消費降級」
2018年11月14日

 

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  中間層の拡大とともに、割高でもより良いモノを求める「消費昇級(アップグレード)」が叫ばれて久しい中国。しかし今年に入ってから、その逆の「消費降級(ダウングレード)」トレンドが指摘されるようになっています。

  その理由として、景気減速に伴う消費者の倹約志向のほかに、即席麺企業の業績が上向き始めたとか、所有から共有へとシフトするシェアリング経済の広がり、さらには会報誌7&8月合併号でも取り上げた「網易厳選」や「淘宝心選」といったノンブランドブームなどが挙げられています。

  そうした中、消費降級の象徴的存在とされているのが「拼多多(ピンドウドウ)」。今年7月に米ナスダック市場に上場したグループ購入サイトです。2015年の設立からわずか3年でアクティブユーザー数が3.5億人に達し、電子商取引(EC)の取引規模でアリババ、京東(JDドットコム)に次ぐ3番手に急浮上しています。

  拼多多の最大のウリは低価格。9.9元の冷蔵庫や599元の液晶テレビなど、安さを求める消費者の心をがっちりと掴みました。ユーザーの7割は女性で、全体の65%が地方都市や農村で暮らす住民とのこと。収入面では大都市に及ばないものの、旺盛な消費意欲は健在。品質やブランドは二の次で、コピー品でもいいからとにかく安さを追求するニーズに見事マッチしたようです。

  ただこの安さも、グループ購入がゆえの、一定の数の購買者が集まって初めて実現するものです。そのツールとして活躍するのがチャットアプリの微信(ウィーチャット)。各ユーザーが独立した個人メディアとなり、買いたい商品について微信で詳しく紹介。そのツイートがまるで「ウイルス」のように10億人超の微信ユーザーに拡散され、グループの招集に成功。売り手側にとっても、大量の注文が確約されるので、低価格でも「没問題(ノープロブレム)」という構造になっています。

  拼多多の人気は、まだ安さを追求する消費者が数多くいることを改めて浮き彫りにしました。粗悪品やニセモノなどの横行が問題視されているのも事実ですが、「割安」を求める声は当面は止みそうにありません。デフレ懸念もある中、消費の昇級(アップグレード)と降級(ダウングレード)が同時に進行する中国。両にらみの戦略が日本企業にも迫られています。

文責:コンサルタント 大亀浩介

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