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2018年中国消費トレンド番付 (18)
幸運のシンボル「錦鯉」 18年には“人間版”が話題に
2019年6月20日
幸運のシンボル「錦鯉」
18年には“人間版”が話題に

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鯉(ニシキゴイ)は中国で立身出世や幸運の象徴
赤や金色に彩られたニシキゴイ(錦鯉)は、中国で「急流の滝を登りきる鯉は、竜門をくぐり、天まで昇って龍になる」という故事から「鯉躍竜門(鯉の滝登り)」と言い伝えられているように、古くから立身出世や幸運のシンボルとして重宝されている。金持ちが観賞用に飼育したりするだけでなく、鯉のモチーフやデザインなどが伝統的建築物や服装にも多く用いられている。

  インターネットが普及し始めた頃から、ネットユーザーたちは「グッドラック(好運)!」と家族や友人に伝える際に、錦鯉の写真やイラストを転送し合った。こうした習慣を利用して、転送すると抽選で賞品がもらえるなどのイベントに活用する企業も現れ、当選者をラッキーな「錦鯉」と称するようになった。
特に2018年に入り、“人間”版の錦鯉が登場し、彼女たち本人の写真を転送して楽しむ一種のブームとなった。そのネットで「錦鯉」と称されたラッキーな女性たちとは?

  テンセント系ネット動画「騰訊視頻」で放映され人気となった女性グループオーディション番組「創造101」で、最終的に3位になった楊超越という選手。歌唱力やダンスの実力はイマイチにもかかわらず、視聴者からの絶大なる支持で運良く好成績を収めたことで、彼女の画像が「人間版錦鯉本鯉」としてネット上で拡散された。

  またアジア全土に配信された百度(バイドゥ)系ネット動画「愛奇異」で配信された人気ドラマ「延禧攻略」の女性ヒロインである魏瓔珞も、劇中で宮女から妃にのぼり詰め、その運の強さから「人間錦鯉」として、その姿がネット上で拡散された。

  なかでも18年に最も話題を呼んだ錦鯉は、国慶節前後に登場。スマホ決済の支付宝(アリペイ)がミニブログの微博(ウェイボ)上で展開した「中国錦鯉」なる抽選イベントだ。

  中国外でのアリペイ利用を促す目的で、世界中の企業200社と提携。すべて読み終わるのに3分は必要とするほどの膨大な数の抽選商品のリストは、瞬く間に大きな話題を呼んだ。この企画ページを転送すれば抽選に参加でき、「中国錦鯉」となるチャンスを得られるというものだ。

  閲読数は2億を突破、シェア数は300万にも達し、ウェイボ史上最も多くのユーザーを動員した抽選イベントとなった。

  抽選結果は10月7日に発表され、「@信小呆」という名のユーザーが中国錦鯉企画の「本鯉」に選ばれ、大きな注目を集めた。彼女の“錦鯉”ぶりを取り上げたウェイボの閲読数は1日で2.5億を超え、関連のスレッドは人気ランキングトップ10のうち3つを占めた。彼女本人のウェイボの読者も、1日で50万人も増加するなど一大フィーバーとなった。

  この「中国錦鯉」ブーム。これはまさにブランド企業との連動型マーケティングが成功した好例といえる。これまで淘宝網(タオバオ)などECサイト運営を通して蓄積した膨大な数のブランド企業に加え、スマホ決済で広く中国人の間に浸透したアリペイを有するアリババならではの賜物だ。

  賞品はアリペイと提携している世界200余りのブランド企業から提供され、スマホからコスメ、航空券、ホテル宿泊券などバラエティに富んだ。例えば、クルージング船「プリンセス号」のアラスカ8日間ツアーや、アメリカの免税店300ドル無料券、モルディブWホテルの無料宿泊券3日分なども含まれていた。

  アリペイの関係者によると、このイベントは世界規模で大きな反響を呼び、当初の200社以外に賞品を提供したいと願い出る企業が後を絶たなかったという。「錦鯉」は18年に最も成功したインターネットマーケティングといっても過言ではない。

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