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2019年中国消費トレンド動向10選 (3)
トレンド③~癒やし経済
2019年8月29日
トレンド③
癒やし経済

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人気ナッツ・スナック類の「三只松鼠」
  都市で生活する人々は、日々大きなストレスに晒(さら)されている。トレンドマーケティングの知萌諮詢機構が公表した「2019中国消費トレンド報告」によると、消費者の76.2%が精神的な焦燥感を感じると回答。その根源にあるのは、仕事や家庭の責任、お金、家族の健康などだ。

  都会人は、ストレス発散の場や癒しを求めている。このようなニーズを背景とした「癒やし経済(※中国語では「療癒経済」)」は新しい経済のトレンドといえる。

  癒やし経済の消費類型は、ストレス軽減、スナック食品、癒し、孤独、サプライズなどに分類できる。

  ストレス軽減消費は、さらに「動」と「静」の2タイプに分類。動は、密室逃亡ゲーム、お化け屋敷、極限チャレンジなど刺激的でストレス解消を狙うもの 。静は、ヨガ、禅修行、フィットネスなど心をリラックスさせるアクティビティが主体だ。 いずれも、これらの消費を通じて、自分に合ったストレス解消が消費者の最大の目的といえる。

  食は、中国人が古の昔から重視してきたテーマであり、精神を整えるのに大きな作用を及ぼす。スナック食品は、人々の空腹を満たすだけでなく、気分転換にも一役買っている。

  ナッツなどのスナック食品を販売する「三只松鼠」の天猫旗艦店では、2018年の「双12(12月12日)」ネットセール日に、開始からわずか12分で5000万元を売り上げた 。1日の売上は1.78億元を達成。

  ひまわりの種などで有名な「洽洽」が近年売り出したミックスナッツの人気商品「毎日堅果」は、これまでの売上がすでに5億元を突破している。

  癒し消費は、商品を購入することで心の慰めを求めること。各種キャラクターグッズのほか、人生や恋愛などのQ&Aが人気の “網紅”ティーチェーン店「答案茶」、コカ・コーラのパッケージにニックネーム・歌詞・クイズなどを印刷したバージョンなどはこれにあたる。

  一昔前、「10級孤独指数対照表」という表が微信(ウィーチャット)の朋友圏(モーメンツ)で流行した。「一人でスーパーをうろつく」や「一人で手術を受ける」などのチャートが人気を集め、「孤独経済」の発展潜在性が垣間見えた。

  5800万人いるとされる一人暮らしの若者の存在は、約1兆円規模の孤独関連ビジネスを生み出す原動力となった。一人食、一人レンタル、一人旅、一人映画、一人暮らしなど、いずれも昨今の都市生活を彩る重要な要素となっている。

  孤独を埋めるために、ペットを飼う人も増えている。 「雲養猫、雲養狗(※ネット上のペットに関する画像や記事を閲覧してペットとの生活を疑似体験)」という言葉も生まれた。

  2020年には中国ペット市場の規模は2000億元を突破すると見込まれている。孤独経済は多くの企業にとって大きな発展のチャンスとなりえるだろう。 
「最近プレゼントをもらっていない」、「30元でサプライズが買える」といったキャッチフレーズを各地で人気のモール等で目にすることがある。「心願先生」に代表される福袋のようなお楽しみ箱の自動販売機が人気を集めている。

  平凡な生活に飽きた現代の若者に、ちょっとした幸せをもたらすこの「新小売(ニューリテール)」の新商法は、サプライズ消費の成功例だ。口紅機(口紅の自動販売機)やクレーンゲーム機なども、味気ない日常に楽しさを求める消費者から高い支持を得ている。

  雰囲気重視のデザインや、共同意識を生むポップアップストアやイベントなどの期間限定型運営、癒しムードの演出、伝統的養生文化の応用などは、いずれも癒やし経済の「心」をターゲットにしたマーケット戦略といえるだろう。

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