会報誌2018年1&2月合併号(vol.51)では、巻頭特集に2018年の中国消費トレンド動向を取り上げました。
「新零售(小売)」と「消費昇級(アップグレード)」という二大トレンドの下、新たに多くの商業モデルやサービスが誕生した17年。そうした業界の動向をおさらいした上で、マッキンゼーやニールセンなど大手コンサル及びリサーチ各社から発表されたレポートを踏まえながら、18年の展望について考察しています。
消費昇級は各方面に波及。ネット通販やコンビニが伸びる一方で、従来型のスーパーは低迷。百貨店なども、体験(コト)型業態を増やしたり、サービスをアップグレードしたりするなど、より快適な空間やムードを醸し出す環境作りが強いられました。パッケージにこだわった商品や健康を意識した有機野菜のサラダ専門店など、味や値段だけでなく「付加価値」や「話題性」がますます重要になっています。
ネット通販も、高品質で安心、さらに知名度の高いブランドを求めて、越境ECが飛躍的に成長。これまでのベビー・マタニティやコスメ類から家電製品や家具など商品のジャンルも幅広くなりました。また「網易厳選」のようにノンブランドながら良質な素材や品質の商品を集めたサイトも人気に。まさに無印良品のように、コンセプトそのものがブランド化するような仕掛けも散見されるようになりました。
次世代の消費の主力として「Z世代」にも注目しました。1995年から2010年までに生まれたZ世代。人口は全体で3.78億人、全人口の約27%を占めています。前世代よりは裕福な環境に生まれ育ち、幼少期からネットが当たり前の時代。溢れた情報の中、自分にとって大事な情報は何かを吟味選別する能力にも長けています。
こうしたZ世代をターゲットにした娯楽やテレビ番組、さらには広告手法などが急に目立ち始めた17年でした。彼らが好むネット配信番組や商品パッケージ、またスマートフォン(スマホ)での口コミを意識したデジタルマーケティングやポップアップストアなど、これまでの広告手法とは異なる取り組みが各社に迫られました。
二次元やアニメ、ゲーム(eスポーツ)、ヒップホップ音楽、さらにはショート動画なども、Z世代が牽引して社会的地位を高めています。ネットを中心に、バーチャル的な結びつきを求める傾向が強い彼ら。一方で、一人での生活や旅行、食事、映画鑑賞などを楽しむ「おひとり様」消費や、買い物は近場のコンビニで、食事は出前で済ませる「なまけ者」暮らしといった新しいライフスタイルが、脚光を浴びつつあります。
健康意識をますます高める中国消費者を背景に、飲食面でも大きな変化が現れています。健康食品や健康関連サービスに興味を示す消費者が増え、サラダやギリシャヨーグルト、アボガドなどが人気に。またグルテンフリーやラクトースフリー食品をデリバリーするお店も登場。さらには定期的に運動する人も増加中で、スポーツ関連消費も大都市を中心に急成長しています。
このように目まぐるしく変わる中国消費ですが、人口も多く、国土も広い、さらに各世代の生まれ育った環境が大きく変わるなど、一概に“ひとくくり”にできないのが現状です。多様化が深まる消費者像やニーズを踏まえ、いかに中国消費者に「求めて(ウォンツして)」もらうか…。まさにマーケティング概念と戦略が必要とされる中国事業。その一助になればとの思いでまとめました。
次に、トレンドウォッチでは「芝麻(ゴマ)信用」を取り上げました。アリババ系金融子会社「螞蟻金服(アント・フィナンシャルサービス)」が2015年1月末に正式運営をスタートした芝麻信用。ネット上での各種消費や行動記録、借入状況をもとに、個人の信用状況を総合的に数値化したシステムのことで、スマホの支付宝(アリペイ)アプリに標準搭載、350点から900点の間で信用状況がスコア表示されます。
この芝麻信用が一躍注目を集めるようになったのが、シェア自転車でしょう。中国各都市の街中でシェア自転車が登場した2016年。当初は、利用開始前に会員登録をする必要があったのですが、その際に200元前後のデポジットの支払いが必須でした。それがいつからか、シェア自転車大手「ofo」を借りる際に、芝麻信用が650点以上であればデポジット不要に。その後、多くのシェア自転車がデポジット免除になりました。
また雨傘やモバイルバッテリーなどのシェアリングサービスにも同じような規定が適用され、さらにはレンタカーでも、借りる際と返却時に要求された高額のデポジットが芝麻信用のスコア次第で免除に。その他にも携帯電話や不動産賃貸、ホテル予約、病院の診察、保険、消費者金融などにも適用され、挙句の果てにはシンガポールやルクセンブルクの訪問ビザ申請にも利用されるほどに。
このように中国社会や生活に「信用」をシステム的に普及させた芝麻信用について、その適用範囲やスコアの計算方法、企業向けのサービス、さらにはライバルである騰訊(テンセント)の動向について考察しています。
中国コンビニ最前線レポートは、アリババが取り組むコンビニ「天猫小店」について。ネット通販の成長が減速トレンドにある中、アリババが目につけたのが全国各地に点在する「パパママストア(家族経営の零細小売店)」。中国全土に700万店もあり、小売チャネル全体の出荷量の40%を占めるといわれています。
こうしたパパママストアを、アリババが小売店を対象とした商品調達プラットフォームである「零售通」を活用し、“今風”のスマートな店構えから商品陳列、品揃えに変えていこうという試み。18年内に全国で1万店の「天猫小店」を誕生(リノベート)させる目標を掲げています。
17年8月末にアリババ本部のある浙江省・杭州に誕生した1号店「維軍超市(スーパー)」。彼らがどのようにアップグレードされたのか、また天猫小店に加盟するメリットや要件、アリババならではのビッグデータを活用した店舗モデルや品揃えの決定方法などについて紹介しています。
そのほか、以下のとおり、中国マーケティングやECに関する情報が盛りだくさんです。
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ニュースレター冊子『チャイナ・マーケット・インサイト』
2018年1&2月合併号(vol.51) もくじ
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【巻頭特集】
『多様化する消費者像とニーズ マーケティング視点がますます重要に』
2018年中国消費のトレンドを探る
【トレンドウォッチ】
『アリババ系「芝麻信用」が個人信用消費の新時代を幕開け』
信用社会へと変化を遂げる中国
【小売・流通現場】中国コンビニ最前線レポート
『零細小売店1万店をリアルとネット窓口でアリババが再生する』
中国各地の“パパママ”ストアを現代的なコンビニ「天猫小店」に
【都市別調査】
高まる健康志向 〜フィナーレ
『亜健康という“新常態” 健康という“非日常”』
広東省都市めぐり 〜その①
『中国経済発展トップ省 省都・広州の新都心』