会報誌2018年3月号(vol.52)では、巻頭特集に中国中古車市場を取り上げました。17年の新車販売台数が2887万9000台と過去最高を更新し、9年連続で世界一の自動車市場となった中国。17年末時点で3.1億台に達した自動車保有台数ですが、同市場の成長はこれまで「新車」販売が主導してきました。
経済成長を背景に、そもそも車を“中古”で買うという概念すらないような社会風潮の中、外観からはどんなコンディションか判断できない車を、悪徳業者に掴まされるかもしれないといった業界に対する不信感もはびこっていました。新車販売が当たり前で、中国全土で各メーカーの「4S(ディーラー)」店が続々とオープンする中、中古車売り場がどこにあるのかもわからず、またメディア等でもほとんど耳にすることはありませんでした。
しかし経済成長スピードが鈍化しはじめ、人々の価値観やライフスタイルにも変化が現れるようになりました。見かけや見栄といった外観ではなく、本当に“良い”モノ、自分が満足できるモノを求める「消費昇級(アップグレード)」トレンドが、中国消費現場に広く広がっています。
一方、スマートフォン(スマホ)の普及に伴い、多くのスマホアプリを介した売買やシェアリングのビジネスが誕生。ビッグデータやAI(人工知能)を駆使した「データ・ドリブン」的なマーケティングや管理手法が活用されるようになり、より信頼度の高い客観的な評価と判断が可能となりました。
こうした変化がいよいよ中古車市場にも波及。つまり、中古でもいいから“良い”車に乗りたい。アプリ経由であれば、規範化された査定価格で安心だし、分割払いなどの金融面だけでなくアフターサービスも充実ということで、中古車を選ぶ消費者が徐々に増えています。
実際に2000年にはわずか25万台だった中古車の年間取引台数は、17年に1240万台と実に50倍近く成長。20年には2920万台に達するとも見込まれています。この有望な潜在市場に目を付けるベンチャー投資も活発になり、各社間の陣取り合戦が白熱。今や中国各都市の街角だけでなく、ネット含め、中古車販売アプリ各社の広告で溢れているほどです。
そこで、今号では中国中古車販売の大手3社である「優信」、「瓜子」、「人人車」を中心に調査を実施。中国中古車市場全体の状況やプラットフォームの発展過程を踏まえながら、各社の運営モデル、ユーザーからの評価、提供するサービスや収益モデル、マーケティング手法、新車販売との連携、主要ユーザー層、そして中国政府の政策や今後の発展トレンドについて、徹底分析しています。
次に、トレンドウォッチでは、2018年に入ってから中国で人気のスマホ向けゲームアプリ「旅かえる(中国語名:旅行青蛙)」を取り上げました。日本のゲーム開発会社であるヒットポイントが17年末にリリースした放置型シミュレーションゲーム。日本語のままで提供されているにもかかわらず、18年1月20日には、中国のApp Store無料ゲームランキングで第1位となりました。
17年11月の配布開始から、アジア全体で3000万回もダウンロードされている中、95%が中国内というデータもあり、スマホSNSの微信(ウィーチャット)や微博(ウェイボ)では、ゲーム内のカエルから送られてくる便りや写真をアップするユーザーが続出。中国語による攻略ページやカエルをもじった漫画なども登場するなど、一種の“ブーム”にもなっています。
このように中国で大人気の旅かえるですが、遊び方は至ってシンプル。クローバーの生える庭とカエルの自宅の2つのシーンしかありません。定期的にクローバーを刈り取って、カエルのために弁当と旅行の支度をしてやるのみ。カエルと一緒に遊ぶこともなければ、話しかけることもできない。カエルがいつ自宅にいて、旅立つのか、どこに行くのかすらわかりません。ただ単にカエルが旅先から送ってくる写真やお土産のみが唯一の交流方法で、どんな写真をゲットしたのか、またチョウやハムスターなどの旅仲間が写っているか否かなどに、一喜一憂するといった内容です。
こんな何ら変哲もない、一見“退屈”にも思えるようなゲームながら、どうして中国で大ヒットしたのか。またどのように中国女性ユーザーの心をわしづかみしたのか。その背景には、最近中国で流行りのキーワード「仏系」が関係しているようです。
仏系とは、仏教が追求する浮世離れした生き方をもじったもの。流れに身を任せ、すべてをありのまま受け入れ、争いや勝ち負けにこだわらない態度を意味します。特に1990年代生まれの「90後」世代の若者を指す仏系ですが、一体、この仏系がどのように旅かえるの人気と結びついているのか。若者だけでなく、中国社会全体に広がる「仏系」価値観について、急成長する中国スマホゲーム市場や女性ゲームユーザーの実態を踏まえながら、洞察しています。
中国コンビニ最前線レポートは、17年に消費現場で大きな話題となった「無人コンビニ」について。16年末に米アマゾンが発表した「アマゾン・ゴー」を契機に、中国で驚異的なスピード感で実用化が進む無人コンビニ。特に17年7月8日に、ネット通販大手のアリババ系「淘宝(タオバオ)」が発表したデモ店「淘珈琲」により、中国無人コンビニの主導権争奪戦が幕を開けました。
「繽果盒子(Bingo Box)」や「F5未来商店」といった新興企業だけでなく、ネット通販大手の京東(JDドットコム)や家電量販の蘇寧(スニン)なども参入。QRコードや顔認証などで入店し、各商品に貼られた電子(RF)タグで価格を自動計算、スマホ決済で支払い完了という店舗が各地で誕生しています。
一方、アマゾン・ゴーのように、電子タグではなく、入店客の顔や格好、仕草、購入の動作などを、天井や壁に取り付けた無数の監視カメラで視覚識別し、センサーとAI(人工知能)で購入額を判断するというタイプの無人コンビニも登場。その筆頭格が17年10月に上海でオープンした「簡24」です。そこで、この簡24と、ボックス型無人コンビニの繽果盒子の2店の現場視察とともに、両社の運営モデルや状況について紹介しています。
そのほか、以下のとおり、中国マーケティングやECに関する情報が盛りだくさんです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ニュースレター冊子『チャイナ・マーケット・インサイト』
2018年3月号(vol.52) もくじ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【巻頭特集】
『中古車販売大手3社「優信」、「瓜子」、「人人車」の広告合戦が激化』
政策緩和と投資増で沸く中国中古(二手)車市場
【トレンドウォッチ】
『超人気“仏系”スマホゲーム「旅行青蛙(旅かえる)」』
ほのぼのとした作風が癒しに、女性市場を席捲
【小売・流通現場】中国コンビニ最前線レポート
『「Amazon Go」を契機に驚異的なスピード感で無人店舗が実用化する』
低コストと場所を選ばない手軽さが最大の利点
『人工知能とセンサーが商品と金額を判断する中国版アマゾン・ゴー』
“走りながら改善”を体現する無人コンビニ「簡24」
【都市別調査】
広東省都市めぐり 〜その②
『進む広州との一体化 省内第3経済都市・佛山』