会報誌2018年12月号(vol.60)では、昨年に続き、「中国消費トレンド番付」を発表しました。「景気停滞」や「消費の伸び悩み」など、ネガティブな印象が強かった2018年の中国経済。一方で、ネットとリアルを融合したオムニチャネル概念「新小売(ニューリテール)」や、値段が高くてもより良いモノを求める「消費昇級(アップグレード)」トレンドを背景に、消費現場では新たな流行がいくつか誕生しました。
18年6月末時点で8億人を超えた中国のネット人口。その98.3%がスマートフォン(スマホ)を使ってネット接続するという「スマホ社会」が、世代を越えて広がっています。スマホ決済の利用者は5.66億人に達し、リアルでの消費でスマホ決済を利用する人は全国で68%、都市部では72%とも言われています。
一方、成長率は緩やかになりつつあるネット通販ですが、年間を通して堅調に成長を維持。18年1~11月期のネット小売総額は、前年比24.1%増の8兆689億元。社会消費品小売総額(小売全体)の18.2%となりました。
シェアリングエコノミーも着実に普及。18年上半期にシェア自転車、配車アプリによるタクシー、シェアライド(ハイヤー)予約を利用したユーザー規模は17年末比でそれぞれ11.0%、20.8%、26.5%増。ネット出前アプリも前年の勢いを継承。市場規模は17年の2052.7億元から18年には2400億元を超えると見込まれています。
2017年の番付で横綱となった「新小売(ニューリテール)」と「消費昇級」。両者ともに、18年にはいずれも多元化が進み、更に成熟しました。
特に「新小売」を提唱し、前面に立って推進するアリババは、傘下の生鮮スーパー「盒馬(フーマー)鮮生」が、店舗数100店超に。上海では1日の売上が100万元を記録する店舗も出現。18年には総合スーパー「大潤発」とも提携し、高級志向のミニスーパー「盒小馬」の展開を開始。現在、全国ですでに11店を出店済みです。
18年に「新小売」で目立った動きを示したのが、家電量販大手の蘇寧(スニン)。18年に新規オープンした店舗数7000店近くのうち、生鮮食品を特色とするミニスーパー「蘇寧小店」を全国60超都市で2900店新規オープン。同社の商品調達・運営管理システムを利用した「蘇寧零售雲店(小売クラウド店)」の加盟店も、新規店舗オープン数が1900を超えました。
一方、「消費昇級」の波も、18年に中国全土で広く深く波及しました。特に旅行、文化、スポーツ、高齢者、家事などサービス関連が、高い成長を保持。消費全体に占める割合は40%超となりました。18年上半期に国内旅行をした人の数は28.26億人で、前年比11.4%増。国内旅行の総収入は2.45兆元に達し、前年比12.5%の成長でした。映画チケットの売上も320.3億元、映画を観た人の数は9.01億人で、それぞれ前年比17.8%と15.3%増でした。
サービスだけでなく「消費昇級」関連の商品の伸びも加速。化粧品の売上は前年比14.2%増で、小売全体の成長を超越。多目的スポーツ車(SUV)の売上も前年比9.7%増で、セダンなど普通乗用車の売上の伸びを4.2%上回りました。「盒馬鮮生」店内では、ロブスターやタラバカニを頬張る客の姿を見かけ、1杯20元以上もする網紅(ネットで人気の)店の「喜茶(HEYTEA)」も、まだ行列が途絶えない状況です。
このように膨張を続ける中国消費に見えますが、実際には逆方向、つまり「降級(ダウングレード)」への動きも現れてきたのが18年の大きな特徴です。スマホ決済の普及により生まれたたくさんの新しいビジネスモデルや消費性向など、今後5年間の中国消費を占う上でも要注目のキーワードをピックアップ。こうしたトレンドの変化を踏まえながら、18年の中国消費トレンドの番付を編成しました。
次に業界研究として、健康意識の高まりを背景に成長を続ける中国フィットネス業界を取り上げました。日常的に運動する人が増えている中、健康維持やフィットネスの目的のみならず、社交やストレス軽減も現代人をスポーツジムやフィットネスクラブに足を運ばせている大きな理由の一つでしょう。
フィットネスやトレーニングがすでに大きなトレンドになっている中国。「逆三角形ボディ」や人魚を思わせるようなシルエットの「マーメイドライン」が賞賛され、スマートフォン(スマホ)SNSの微信(ウィーチャット)の朋友圏(モーメンツ)に、自身の鍛え上げた姿をシェアする人も増えています。
スマートウォッチやブレスレットなどウェアラブル機器のほか、専門性の高いスポーツウェアやシューズの人気も上昇。「まずは格好や見た目から」というニーズも高まり、フィットネスだけでなく周辺の市場も大きく成長しています。
フィットネス・トレーニング人口の増加に伴い、従来型のスポーツジムのほか、多様なニーズに即した新興のフィットネスクラブが誕生。ここ数年、特に頭角を現しているのが「スマートジム」と呼ばれる新業態。微信でQRコードを読み込み、アプリをダウンロード。ユーザー登録の後、希望のコースの費用を支払うのみで、年会費などを払わなくても会員になれる仕組みです。投資ファンドからも多くの注目を浴び、巨額の融資を得た新興のスマートジムも少なくありません。
今号では、拡大が続く中国フィットネス市場規模と概況を踏まえながら、競争激化で経営難が6割とも言われている実情、会員更新率はわずか15%前後で過剰なセールスが訴訟案件になっている負の側面にも言及。大型のチェーン店と勢力を拡大するパーソナルジムを比較しながら、新勢力として注目と人気を集めるスマートジムのうち、光猪圏(Sun Pig)、楽刻運動(LEFIT)、超級猩猩(Super Monkey)をピックアップ。今後のトレンド含め、詳細に分析しました。
そのほか、以下のとおり、中国マーケティングやECに関する情報が盛りだくさんです。
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ニュースレター冊子『チャイナ・マーケット・インサイト』
2018年12月号(vol.60) もくじ
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【巻頭特集】
『消費昇級と降級の交差から新たな潮流が登場』
2018年中国消費トレンド番付
【業界研究】
『個性化と多様化が進む中国フィットネス業界』
スマホ介した「スマートジム」が今後の主流に?
【小売・流通現場】中国コンビニ最前線レポート
『出前や配達サービス、簡便商品を利用する「怠け者」消費伸長』
デリバリー普及がコンビニに与える影響
【都市別調査】
パパママストアという伏兵
『中国コンビニの新勢力 杭州から西安まで』