会報誌2019年6月号(vol.65)では、巻頭特集に中国の「ウィンタースポーツ」業界を取り上げました。2022年に北京での冬季オリンピック開催が決まり、中国でスキーやスケートといったウィンタースポーツへの注目度がにわかに高まっています。
官民挙げてウィンタースポーツ市場の発展に動き出した中国。国家体育総局は18年9月、「『氷雪スポーツへの3億人動員』実施綱要(2018-2022年)」を公布し、22年までに3億人を氷上・雪上スポーツに参加させることを目標としました。これに倣い、各省・市も相次いで関連政策を制定。ウィンタースポーツの発展と大衆の動員に取り組み始めています。
スキー場などのウィンタースポーツ施設の数は増え続け、スキーを楽しむ人の数も年々上昇。氷雪関連産業や冬季ツアー、イベント、スキー場の建設や運営、スクール運営などに、ベンチャー資本からの熱い視線も集まっています。
市場調査会社の易観国際と騰訊体育(テンセント・スポーツ)が共同で公表した「2018中国氷雪産業白書」によると、17年の中国氷雪関連産業規模は3976億元に達し、今後3年で更なる成長を遂げると予想。国家体育総局が公布した「氷雪スポーツ発展計画(2016-2025年)」では、中国の氷雪関連産業の規模は20年に6000億元、25年には1兆元に達すると見込んでいます。
このように北京冬季オリンピックを契機として発展が見込める中国ウィンタースポーツ業界について、スキー産業の発展動向から人口、スキー場の数、屋内スキー場の建設状況、スキー関連消費、スノーボード人気、アイススケートリンク、アイスホッケー、国民の関心状況、政府による授業カリキュラム化及びスキースクールの状況、スポーツブランド各社の動向、スキーリゾートとテーマパークなどについて、調査・分析しています。
次に業界研究として、中国での生活のあらゆるシーンに浸透している「モバイル決済」をピックアップ。外食やスーパーでの買物から、バスや地下鉄などの公共交通機関、病院、光熱費などの公共料金、航空券など、あらゆる場面でスマートフォン(スマホ)決済が可能となった中国。
小売店やレストランで支払いをする際には、店員に「微信(ウィーチャット)にしますか?それとも支付宝(アリペイ)?」と聞かれ、コンビニでちょっとした買物に現金を出そうものなら、ため息すらつかれてしまう。財布を持たず、スマホだけを手に出かける生活は、若年消費者を中心にすっかり定着しています。
プライスウォーターハウスクーパースが公表した「2019年世界消費者意識調査(Global Consumer Insight Survey 2019)」によると、中国の人口の86%がすでにモバイル決済を利用とのこと。また17年より四半期ごとに「中国第三者モバイル決済ユーザー研究報告」を公表している市場調査会社のイプソスも、19年第1四半期時点におけるモバイル決済ユーザー規模10.1億人(※1人が複数のアカウントを持っている可能性あり)のうち、16~59歳の消費者に限定すると、モバイル決済ユーザーは約8.1億人で、全体の80.2%を占めるとしています。
実際にデビットやクレジットカードを含む「キャッシュレス」決済が全体の8割以上占めるというデータもある中国のキャッシュレス社会。その巨大決済市場をほぼ独占しているのが、ウィーチャットペイ(微信支付)とアリペイ(支付宝)の2社。19年の第1四半期時点で、テンセント傘下の「テンペイ(財付通)」(ウィーチャットペイ及びスマホQQウォレットを含む)とアリペイの普及率はそれぞれ89.2%と69.5%で、ユーザー規模も9.4億人と7.4億人に達しています。
もはや新たなプレイヤーにつけ入る隙きを与えない両巨頭ですが、そこに割って入り込もうとするのが、世界最大のクレジット(デビット)カード発行枚数を誇る銀聯(ユニオンペイ)です。17年末に運営を開始した非接触(NFC)型のモバイル決済「雲閃付(クイック・パス)」により、「QRコード」陣営の牙城に挑んでいます。
14年からスタートした6月2日の「銀聯62節」というオフラインのビッグセールを主催し、決済シーンでの主導権奪還を目論む銀聯。一方で、ウィーチャットとアリペイに慣れた消費者の利用習慣を変えるのは容易ではなく、銀聯はじめ他社の参入余地はあまり大きくないのが現状。こうした中国モバイル決済の現状や今後の動向について、調査・分析しています。
今号では「百貨店」業界の研究にも取り組みました。中国政府が三公消費(公費による飲食や海外旅行、公用車の私用化)を制限したことや消費トレンドの変化、電子商取引(EC)の影響などにより、百貨店業界は業績不振に苦しみ、閉店に追い込まれた店舗も少なくありません。
2019年2月に、家電量販最大手の蘇寧易購(スニン)が万達(ワンダ)集団傘下の37の百貨店全店を正式に買収することを発表。中国の百貨店業界に新たな注目が集まる契機となりました。
百貨店業界はECのほかにもショッピングモールやコンビニなど、消費者のニーズが多様化していく中、生き残りの道を探るべく、オンラインとの融合や商品構成の転換、体験(コト)業態の増加、会員制のリニューアルなど、多くの試みに取り組んで来ました。その結果、昨年頃から百貨店業界に景気の底打ち感と、それに続く回復傾向が顕著になり、業績が好転する店舗も増えているようです。
中国百貨店トップの北京SKP(元・新光天地)は、17年に1店舗で125億元を売り上げ、18年には135億元と更に記録を更新。銀泰百貨も年度比で37%と大幅な成長を記録。王府井集団は純利益がここ5年間で最高に。遠東百貨は10年ぶりに黒字に転換。百盛集団(パークソン)も17年に黒字転換し、18年も安定的な成長を示すなど、軒並み業績は上向きつつあるようです。
多額の投資が相次ぎ、業界の再編とアップグレードが加速化する中国百貨店業界。中国消費を牽引してきた同業界について、OMO(Online Merges with Offline)概念の「新小売」をはじめとするネットの取り組みからネット企業大手との提携、ハイテク技術の導入、ビッグデータを活用したデータ・ドリブン・マーケティングの状況、自営店舗やPB(プライベート・ブランド)の展開、コトを意識したモール化などの視点から調査・分析しています。
そのほか、以下のとおり、中国マーケティングやECに関する情報が盛りだくさんです。
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ニュースレター冊子『チャイナ・マーケット・インサイト』
2019年6月号(vol.65) もくじ
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【巻頭特集】
『中国ウィンタースポーツ市場&産業の発展状況』
北京冬季オリンピック開催決定で急成長
【業界研究】中国モバイル決済
『「現金お断り」も“当たり前”の中国キャッシュレス社会』
微信支付と支付宝の牙城に挑む銀聯「雲閃付」
【業界研究】中国百貨店業界
『中国百貨店業界の現状を徹底分析』
業態改革で低迷から脱出か?
【都市別調査】
フリマと動画のロンド②
『習慣化する中古品取引&飽きさせない動画アプリ』