会報誌10月号(vol.68)では、巻頭特集で「国潮」ブームを取り上げました。「国潮」とはすなわち、その文言のとおり、「中国+潮流」の造語のです。
当初、中国のデザイナーが立ち上げたストリート系のファッションブランドのことを指していました。その後、中国の伝統的な要素をデザインに含む製品全般に対して用いられるようになり、現在では中国製または中国産、つまり「メイド・イン・チャイナ」の良質なブランド全般を意味し、かつ再評価する風潮を指すようになっています。
ファッションからグルメ、コスメ、家電、文創(文化「カルチャー」+創造「クリエイティブ」の造語)まで、中国ブランドの台頭は各業界の共通したトレンドとなりつつあります。1927年設立のスニーカーブランド「回力(Warrior)」が国際的なファッションウィークのランウェイに登場。中国版ミルキー「大白兔」はコスメブランドとのコラボによるリップクリームや香水を発売するなどです。
「非遺(※「非物質文化遺産」の略で無形文化遺産の意)」が人気ワードとなり、伝統的な刺繍を施したパーカーを来た若者を街で目にするようになりました。新しい「国産品(※中国語で「国貨」)」の波は想像を遥かに超えた一大ムーブメントとなりつつあります。
微信(ウィーチャット)の朋友圏(モーメンツ)で「国潮」関連の投稿を目にする機会も増えています。国産品を買い、国産品を使い、国産品を友人たちに見せびらかすことは、中国の若者の新たなライフスタイルとなりました。そんな彼らのことを巷では「国潮青年」と称しています。
こうした若者を中心に中国国産ブランドや製品を再評価し、かつ愛用し始めた中国において、日本含む海外ブランドはどう立ち向かっていくべきなのか。スマートフォン(スマホ)や家電など国産ブランドがすでに大きくシェアを伸ばしている分野だけでなく、これまで海外ブランドが強かったコスメや食品などでも「国潮」と称したブランドや老舗店舗が勢いを増しています。
こうした中国の“国産偏重”トレンドは、近い将来、日本企業(ブランド)にも脅威となりうる可能性を秘めています。高い品質やデザイン性など「ジャパン・プレミアム」として高評価の日本企業ですが、こうしたトレンドの変化はウォッチしておく必要があります。そうした日本企業に対して警鐘を鳴らすためにも、今回徹底的に調査・分析しています。
次にトレンドウォッチとして、ビジネススーツやシャツをメインとするオーダーメイド服のスマホアプリビジネスの現状に迫りました。
収入や生活水準の上昇に伴い、中国の消費者の嗜好は「ロゴ(ブランド)信仰」を経て、クオリティ重視へと回帰しつつあります。なかでも特に「個性」を重視する若年消費者の間では、マイナーなデザイナーズブランドが人気を集め、オーダーメイドブランドも注目を浴びています。
中商産業研究院の統計によると、2013年以降、中国アパレル業界におけるオーダーメイド製品市場の年間成長率は22.9%で、市場規模は13年の600億元から2017年には1,371億元にまで成長。光大証券の予測では、2020年には2,000億元前後に達すると見込まれています。
かつて、オーダーメイドと言えば、ハンドメイドで高級な生地を使用し、価格も高いイメージが強かったでしょう。ビジネススーツなら1万元(約15〜16万円)以上、高いものだと数万元にもなり、高所得者の特権といっても過言ではありませんでした。
そうした中、多くの業界でネットを介した業態が続々と登場し、スマホを活用したスマート化も進みました。また消費者のニーズに応じて生産する「C2M(Customer to Manufacturing)」的な「柔性製造(フレキシブル・プロダクション)」といった技術革新も進展しました。
このような環境の変化を背景に、ビジネススーツ業界でもスマホを介した「イージーオーダー」アプリが相次いで登場。庶民でもオーダーメイド製品を気軽に手に入れられるようになりました。
スマホから注文すると専門スタッフが自宅(オフィス)まで訪問、採寸してくれるサービスが話題となり、すでに100万人の顧客を有するアプリも登場。実際に自らもスーツを一着新調した経験も交えながら、この新しいビジネスモデルについて紹介しています。
業界研究では、中国越境EC(電子商取引)をピックアップしました。中国経済の急成長による生活水準の向上、海外への留学や旅行の増加、さらには海外からの文化や流行の流入などに伴い、よりハイクオリティな外国商品を求める消費者が増えています。
またより良いモノやサービスを欲する「消費昇級(アップグレード)」トレンドも中国全土で広がる中、こうしたニーズを満たすプラットフォームとして、越境ECの発展は目覚ましいものがあります。海外ブランドにとっても、自国に居ながらして中国消費者に直接販売できることから、多くの日本企業も注目していることでしょう。
2013年以降、急拡大を続ける中国の越境EC市場規模。電子商務研究中心が公表した「2018年度中国輸入越境EC発展報告」によると、2018年にB2B、B2C、C2C、O2Oなどの形式で行われた越境取引の規模は、前年比26.7%増の総額1兆9,000億元に達したもよう。越境ECを頻繁に利用する人の数は、2018年12月末時点で前年比34%増の8,850万人だったようです。
また中国調査会社の艾媒諮詢(iiMedia Research)も、「2019上半期中国越境EC市場研究報告」で、中国の海外通販ユーザー規模は2020年に2.11億人を突破すると試算しているなど、さらなる拡大が見込まれる中国越境EC市場。一方で今年9月に、越境EC市場シェアの半分を二分してきたアリババ系天猫国際(Tモールグローバル)による網易考拉(ネットイースコアラ)の買収のニュースは業界内外に大きな驚きを与えています。この買収の目的とは?
中国政府も越境EC市場の発展をサポートする政策を相次いで発表。沿岸部の大都市から内陸部の地方都市にまで広がりを見せる同市場の現状と今後の動向について調査・レポートしています。
そのほか、以下のとおり、中国消費やマーケティングに関する情報が盛りだくさんです。
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会報誌『中国消費洞察』
2019年10月号(vol.68) もくじ
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【巻頭特集】中国国産ブーム「国潮」を徹底解剖
国産を好む若者が急増中!
「国潮青年」が生む消費のニュートレンド
【トレンドウォッチ】オーダースーツアプリ
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オーダースーツも「訪問」採寸+販売の時代に
【業界研究】中国越境EC業界
アリババのコアラ買収でどうなる?
中国全土に広がる越境EC市場
【マーケティングレポート】ナマケモノたちの家①
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