会報誌11月号(vol.69)では、巻頭特集で「抖音(ドウイン)」を取り上げました。2018年頃から中国を席巻しているショート動画(短視頻)ブーム。なかでも日本では「TikTok(ティックトック)」で知られる抖音は、圧倒的な人気を誇るアプリです。
これまでにも大量の流行語や流行音楽、さらには多くの「網紅」(ワンホン ※ネットで人気の)商品を生み出してきた抖音。同社のデータによれば、18年12月時点の中国国内のデイリーアクティブユーザー数は2.5億人を突破。月間アクティブユーザー数は5億人に達したとのこと。19年7月の最新データでは、デイリーアクティブユーザーが3.2億人と、利用者は今も増え続けています。
この大流行に便乗し、抖音をマーケティングに利用する企業も増えています。大手ではスポーツブランドのアディダス、国産スマートフォン(スマホ)の小米(シャオミ)、人気火鍋チェーンの海底撈など。マイナーなところでは十数元の香水から、ミルクティー、アイスクリームブランドまで様々。
その影響力は微信(ウィーチャット)や微博(ウェイボ)を凌ぐほどに。中国で最近「二微一抖」と称される微信、微博、抖音の3アプリは、今や中国のニューメディアマーケティングの常識と目されるようになりつつあります。
文字や静止画像を利用する従来型の方式に比べ、ショート動画を用いたSNS(ソーシャルサイト)形式の抖音は、若者の今を反映しやすいというメリットがあります。
微信のオフィシャルアカウント同様に、抖音でも企業の公式アカウントの制度「企業藍V認証」を18年6月からスタート。ショート動画を通じて、よりダイレクトにブランドイメージや商品の良さをアピールするだけでなく、ショッピングカートや微信上で動く小程序(ミニプログラム)との連動のほか、ユーザーやトラフィックの分析などもできるようになりました。
18年4月号ですでに特集を組んだ抖音ですが、今号では、企業としていかに活用するかという観点から再度調査・分析しています。今や中国での成功に欠かせない「網紅」の“製造マシン”として抜群の威力を持つ抖音について、まずは人気コンテンツの作成法として、数ある成功例から7つの法則を編み出しました。
次に、インストリーム広告、オープンスクリーン広告、ステッカー広告、BGM広告、挑戦コンペ企画、網紅・達人との提携などの広告・宣伝方法。そして企業公認アカウント「企業藍V認証」の特典と申請方法(条件)。さらには活用法として、POI(Point of Interest)、ポップアップストア、ショッピングカート、抖音版ミニプログラムについて、抖音の運営代行会社の業務内容とともにまとめています。
業界研究では、物流業界の新しい分野として最近注目度アップの「市内即時配送」について。ネット通販から出前、生鮮品などの「モノ」から、家事代行やネイルなど「コト」へと配送のカバー範囲を拡大している中国の宅配業。スマートフォン(スマホ)一つで「いつでも、どこでも」消費できるライフスタイルが日常に深く浸透し、そのニーズはさらに高まり続けています。
そうした中、近年特に同一市内に限定したピアツーピア(P2P:個人間)タイプの市内即時配送が急拡大中。経済が発展した都市部で慌ただしい生活リズムを強いられ、お金よりも時間を優先する社会風潮が広まる中、多少お金を余分に払ってでも時間を節約したい——という人たちが増えています。
こうした中国人のライフスタイルの変化を背景に、物流業界のニッチなニーズを見事にとらえた市内即時配送。今すぐ何かを届けたい・届けてほしいというニーズを、集配センターを通さず、かつ他のオーダーとの重複なしで「一対一」で対応。ビジネス関連の文書や証明書類、食品、生花、ギフト類の宅配のほかに、イヌの散歩やネコの世話など変わった依頼も出てきているようです。
この分野のリーディング企業である「閃送(FlashEx)」。2014年に北京で設立されて以来、サービスの提供カバー範囲は全国222都市に拡大。ユーザー数は1.38億人超で、配送スタッフは70万人以上。1日の平均受注件数は60万件超えで、アクティブユーザー数は前期比58.9%増と急成長中の注目企業です。
今号では、閃送の費用基準やシステム、配送スタッフの管理、給与及びインセンティブ体系などの詳細に触れながら、中国物流業の新しい市内即時配送市場の現状と今後の動向について解説しています。
トレンドウォッチでは、中国の“白髪”世代について。2018年に65歳以上の人口が1.66億人に達し、高齢化社会が急速に進む中国。2050年には65歳以上の高齢者の割合は26%に達すると予想されています。
一方で、高齢者人口の増加に伴い、「シニア経済」の潜在性に大きな注目が集まっています。全国老齢工作委員会が公表した「中国老齢産業発展報告」によると、2014~50年の期間、中国における高齢者の消費規模は4兆元から106兆元に激増。GDPに占める割合も33%に達する見込みとのこと。今、中国は高齢者産業の潜在性が最も高い国と言えるでしょう。
改革開放政策による経済成長の恩恵を最も享受してきたシニア層は、心理的にも身体的にも若々しく、以前の“老人”とは一線を画しています。経済的余裕があり、価値観もよりオープンなのが特徴。消費の面でもより高いクオリティ、より良い消費体験やサービスを求め、スマート化、デジタル化した製品にも興味津々。ネット通販やスマホ決済を使いこなす高齢者も増え続けています。
高齢者向けのアプリも多様化が進み、ソーシャルメディアの影響力も高まっています。シニア層のモバイル利用状況の把握は、シニア向けマーケティングにとって欠かすことのできない重要なステップになりつつあります。
そこで、今号では中国のモバイル関連ビッグデータ研究のMob TechとQuest Mobileの両社が発表した「銀髪族」(※中国語で「銀髪」は「白髪」の意)と称される45歳以上のミドル及びシニア層のスマホユーザーを対象にした調査レポートをピックアップ。この両社の報告書をもとに、中国の45歳以上の“白髪”世代のスマホ利用状況と彼らの好むアプリについて詳細に分析しました。
そのほか、以下のとおり、中国消費やマーケティングに関する情報が盛りだくさんです。
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会報誌『中国消費洞察』
2019年11月号(vol.69) もくじ
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【巻頭特集】人気ショート動画アプリ「抖音(TikTok)」
毎日3億人が閲覧する巨大メディア
「抖音」の作成から活用、広告まで徹底解説
【業界研究】中国物流の新潮流「市内即時配送」
食品や生花からゴミ捨て、犬の散歩まで
1対1の同一市内個別宅配で急成長の「閃送」
【トレンドウォッチ】中国ミドルシニア層の消費実態
モーメンツやTikTokも大好き!!
中国“白髪”世代のスマホ利用状況大調査
【マーケティングレポート】ナマケモノたちの家②
スマピ、出前、ペット それ本当にモノ消費?