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“雲”の上で働く、中国「テレワーク」最新事情(8)
微信の強みと機能をフル活用 テンセント系「企業微信」
2020年12月22日
微信の強みと機能をフル活用
テンセント系「企業微信」

  企業微信(ワーク・ウィーチャット)は、騰訊(テンセント)の微信(ウィーチャット)チームが開発した企業向けコミュニケーション・業務ツール。2016年4月に正式に運営を開始している。

  最大の特徴はその使いやすさだろう。多くの中国人がウィーチャットの操作に慣れていることもあり、スムーズに使用方法を習得することができる。
また最大の強みといえるのは、ウィーチャットの「お友達」をそのままメンバーに追加し、モーメンツと繋ぐことができる点だ。

  顧客のウィーチャットアカウントを登録すれば、チャットやグループチャットを通して様々なサービスを提供できる。コンテンツを顧客のモーメンツに配信することも可能だ。さらにウィーチャット上で動くミニプログラム(小程序)やウィーチャットペイ(微信支付)といった機能にも接続できる。

  ウィーチャットでの基本的なチャットや通話機能のほか、スケジュール管理、ウェブ会議、クラウドドキュメント、オンラインストレージ、タイムカード、社内稟議、公費通話、企業Eメール、決済などの機能が搭載されている。

  多くの外部アプリも使用可能で、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通して自社アプリと連携させることも可能だ。
現在、企業微信を使用している企業はすでに250万社に上る。その8割が中国のトップ500社にランクインする企業で、アクティブ企業ユーザーが 17%、アクティブユーザーは6,000万人に達している。

  業界も小売、教育、金融、製造、インターネット、医療など幅広く、約50の業界で使われている。すでに21,000社の第三者企業とウィーチャット・エコシステムを形成。470万のシステムに接続している。

ウェブ会議ニーズに対応
1千万人の同時視聴が可能

  新型コロナウイルス危機に伴うテレワーク需要に対応したアップグレードも実施。

  1万人規模のグループでの利用が可能となり、通信スピードも向上させた。ウェブ会議では同時に300人の参加が可能となり、どこでも音声・動画会議が開催できるようになった。

  主催者は会議の出席者を管理し、スクリーンやドキュメントを使ったオンタイムのプレゼンテーションを行うことができるほか、グループライブ、各種情報の収集、オンライン問診、1,000人までの緊急通知、新型コロナ情報などの機能も追加された。

  グループライブ機能を用いれば、1千万人が同時に視聴可能となる。これは学校や教育機関にとってはうれしい機能といえるだろう。

  学生は新たにアプリをダウンロードすることなく、ウィーチャット上から直接授業に参加できる。オフラインの教育機関もこのツールを使えば簡単にオンラン授業への移行が可能だ。企業の通知やオンライントレーニングも容易に実施できる。

企業微信からEC販売へ
ライブコマースも活用

  他のオフィス向けツールと比べた場合、企業微信の強みはウィーチャットの個人ユーザーに容易にアクセスできる点にある。業務関連の処理をサポートすると同時に、顧客開拓や管理もでき、販売とのリンクも可能だ。

  例えば、アパレル販売の「GLORIA(歌莉婭)」は、企業微信に顧客のウィーチャットアカウントを追加して、顧客のモーメンツに商品情報を流した。一方で、ウィーチャット上で動くミニプログラムを活用して、ECショップをオープン。ウィーチャット上で気に入った服をすぐに購入できるようにした。

  その結果、企業微信を通じて1日の売上が平均100万元に達し、多いときには300万元を超すこともあった。企業微信を通じてビッグデータの分析も実施し、市場戦略をオンタイムで調整することもできるようになった。

  企業微信にはライブ動画の配信機能も搭載されている。ライブ配信した動画はグループやウィーチャットでシェアすることも可能だ。

  香港系ドラッグストアのWatson’s(屈臣氏)は、新型コロナの感染拡大が始まった頃、中国全土で24,000名を超える店内のスタッフを組織化。微信のモーメンツやグループチャット、ミニプログラムなどの機能を駆使し、商品の紹介から販売に繋がる体制を整えた。

  同社はまた、2月中旬にはテレビショッピングのスマホ版である「ライブコマース」を通して、各動画配信で数千元から1万元以上の売上を記録したという。

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