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2020年中国消費トレンド番付 (5)
関脇(西)ライブコマース:ライブコマース 人気が持続 今年も見事にランクイン
2021年1月29日
ライブコマース人気が持続
今年も見事にランクイン

  ライブコマースは、2019年にも番付に登場しているが、その発展に伴い、今年も再度ランクインを果たした。

  コロナの流行期、オフラインの消費現場はほぼ完全に動きを止めた。ライブコマースは“瀕死”状態の各社にとって、生き残りを賭けた重要なマーケティングツールとなった。ライブ配信専用のスタジオからだけでなく、店舗や工場、農地など現地から、2020年はあらゆるジャンルの人々がライブ配信で商品を販売する年となった。

  中国政府商務部の統計によると、2020年上半期、中国全土で配信されたライブコマースは1,000万回を超え、ライバー(ライブ配信者)のアクティブ数は40万人、視聴者数は500億人を突破。販売された商品の数も2,000万種に上っているという。

  大塚家具との業務提携合意が発表された中国家具販売大手の居然之家(EASYHOME)の例を見てみよう。

  2月1日から、各店舗からの大規模なライブコマースを展開。3月15日までに308店舗がライブコマースに参加。1日平均のライブコマース実施店舗数は260店前後、1日の平均視聴者数は6.2万人を突破した。1日平均の新規フォロワー数は1.4万人で、受注件数は1日平均3,600件を超えた。

2021年には2兆元超に?

  ライブコマースは近年急速に発展しているオンラインショッピングの一業態で、市場規模も急拡大を続けている。市場規模は2019年通年で4,437億元だったのに対して、2020年上半期ですでに4,561億元と、すでに前年1年分の規模を超えている。

  国際会計事務所グループのKPMGとアリババ系のシンクタンク「阿里研究院(AliResearch)」が共同で2020年10月に公表したレポート「1兆元市場へと邁進するライブコマース」によると、商店の7割がライブコマースで売上を伸ばすことに成功したという。

  また66%がライブコマースにより新規顧客を獲得。ライブコマースにより商品やサービスを宣伝している店舗も6割近くに達したもよう。

  さらに2020年のライブコマースの全体規模は1兆元を突破して1兆500億元に、浸透率も8.6%に達するとの試算もある。2021年には2兆元を超え、浸透率も14.3%になるとも予想されている。(図4:中国ライブコマース市場規模)
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CEOや芸能人もライバーに

  2020年には、創業者やCEO(最高経営責任者)など企業トップによるライブコマースも話題を呼んだ。

  オンライン旅行販売大手のシートリップ(携程)の梁建章総裁、スマホ・家電の小米(シャオミ)の雷軍総裁、エアコン最大手のGREE(格力)の董明珠董事長などがライブコマースに登場。なかでも董明珠氏は65.4億元という驚異的な売上を実現している。

  双11(ダブルイレブン)セールでも企業トップによるライブコマースは多く配信され、華為(ファーウェイ)、エコバックス、ハイアール、P&G、元気森林など著名ブランドのトップが自らライブコマースに出演。

  芸能人によるライブコマースも常態化した。人気女優の劉涛(リウ・タオ)はアリババの“社員”としてライブ配信にレギュラー出演。共同購入アプリ「聚劃算」のご意見番として、6月6日までに4回のライブコマースを配信し、1億元以上を売り上げた。新規顧客比率は9割を超えたという。

  芸能人によるライブコマースは、本人のファンや大衆からの認知度の高さで、商品の販売を後押しできるのが大きな魅力といえる。

  7月6日に、人力資源・社会保障部、市場監管総局、国家統計局が共同で公布した9つの「新職業」で、「網絡営銷師(ネットマーケティング専門家)」の一つとして「直播銷售員(ライブコマース販売員)」が新たな職業に正式に認定を受けた。

  また、今年の双11(ダブルイレブン)セールでは、超人気ライバーの薇婭(Viya)と李佳琦(Austin)の2人が、今後も超越することが困難と思われるほどの大記録を樹立した。

  2人はそれぞれ23回と22回のライブコマースを配信し、123億元と98億元の取引額を実現。予約販売だけで淘宝に80億元近い取引額をもたらした。

  この2人の活躍により、人気ライバーの社会的認知度に加え、ライブコマース業界の商業的価値は大きく上昇を続けている。

  現在、ライブコマースのトップ3は淘宝(タオバオ)、快手(クアイショウ)、抖音(ドウイン)。しかし、他のプラットフォームもそれに甘んじてはいない。

  京東(JDドットコム)は人気男性歌手の汪峰(ワン・フォン)などを招聘。拼多多(ピンドウドウ)も、県長(知事)によるライブで話題を呼んだ。百度(バイドゥ)や美団(メイトゥアン)などもすでにライブコマースに参入している。

  テンセント(騰訊)は傘下のライブ動画配信アプリ「看点直播」のほかに、微信(ウィーチャット)の視頻号(動画専用アカウント)も導入。2020年9月末には、視頻号にEコマース機能を付加し、ライブコマースにも参入した。

  視頻号の最大の価値は、微信の個人アカウント、公式アカウント、ミニアプリ、ショート動画、ライブ動画などと相互にリンクし、完全なるクローズド・システムを構築できる点にある。つまり、プラットフォームを跨いでユーザーを誘導する必要がなくなったといえるだろう。

欠点や弊害も浮き彫りに

  破竹の勢いで発展を続けるライブコマースだが、今年は芸能人によるライブコマースの失敗や、高い返品率、虚偽の宣伝、二流品、ニセモノなど悪いニュースも相次いだ。

  中国政府もこの状況に鑑みて、関連の監督管理政策を公布。

  10月20日には国家市場監督管理総局が「インターネット取引監督管理弁法(意見請求稿)」を発布して、ライブコマースに再視聴機能を付けることを義務化。ショップが悪い口コミを勝手に削除し、良い口コミを前に置いて消費者への情報操作を行うことを禁止した。

  11月23日には、国家広電総局が「国家広播電視総局 インターネットライブショー及びライブコマースの管理強化に関する通知」(業界規範)を公布。「違法・悪徳芸能人に出演・発言の機会を与えない」、「未成年ユーザーの投げ銭禁止」、「偽造データ防止」などといった規則を提唱。

  12月7日には中央政府が「法治社会建設実施綱要(2020-2025年)」を公布し、インターネットのライブ動画配信や、自媒体(個人メディア)、知識コミュニティにおけるQ&Aなどのニューメディア業態や、アルゴリズム方式による推薦機能、AI(人工知能)に基づく人物画像合成技術のディープフェイクなど、新しい技術に対する規範管理に乗り出した。

  2020年にコロナ危機を経て、ライブコマースはさらなる発展を遂げたが、同時に多くの問題点も噴出し、監督管理も強化された。企業や店舗によるライブコマースは常態化し、重要な販売チャネルの1つとしてすでに定着。2021年には合法化と専業化が進み、成熟した業界としてさらなる発展が期待される。

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