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“網紅”活用「S2b2c」モデル研究レポート(5)
S2b2cモデル・ケーススタディ② 酒類販売専門チェーン「1919」
2021年3月23日
S2b2cモデル・ケーススタディ②
酒類販売専門チェーン「1919」

  ソーシャルECのみならず、特定のカテゴリやテーマの商品を専門的に扱う垂直型ECでもS2b2cモデルが普及しつつある。中国の酒類専門ECプラットフォーム大手の「1919酒類直販」がその代表例だ。

  中国の酒類市場は1兆元規模の巨大マーケットだ。同業界内には数万社の各種酒造メーカーと300万社の流通業者が存在している。酒造メーカーは知名度の高い一部のブランドを除き、その大多数が生産過剰や商品の同質化、脆弱な販売網などの問題に苦しんでいる。

  従来の流通・販売網の構造では中間業者の数が多く、メーカーから流通、小売販売に至るプレイヤー間で情報をシェアすることが少なく、各々が常時情報不足の状態にあった。

  消費者のニーズだけでなく、在庫や売上といった情報も得ることができず、生産や入荷、在庫調整などの意思決定は、基本的に経営者の主観に頼るところが大きかった。

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  結果としてサプライチェーン全体で多量の在庫が生まれ、販売や物流にかかるコストも引き上げられていた。(図5:従来の酒類流通モデル)

  このように非効率な酒類の流通・販売網の問題を打破するため、1919酒類直販は、データドリブン型のS2b2c業務システムを構築。サプライチェーンにおける無駄なプロセスを省略した。

  ビッグデータやクラウド小ピューティング、BI(ビジネス・インテリジェンス)などのツールを活用。サプライチェーン、小売店、消費者それぞれのデータをタイムリーにシェアできるようにした。

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また生産、在庫管理、入荷、販売などの意思決定をデータをもとに判断し、サプライチェーンと販売網のスマート化も実現。S・b・c間で速やかに情報をシェアすることで、cのニーズに合致した商品やサービスを適時に提供できるようにした。(図6:1919酒類直販のS2b2c業務システム)

  S2b2cモデルの下、1919酒類直販には全国500都市に1,900店以上のbが登録済みだ。

  1919側が店舗と会員の管理システムをSaaS(Software as a Service)ツールとして提供。国内外の多くのSから酒類(商品)を一括購入(集中調達)し、受注処理から供給、倉庫物流などを担当。cの属性データをもとにマーケティングなどのアドバイスやサービスを提供している。

  1919は単なる酒類専門の販売から、サービスやソリューションを提供するプラットフォーム型企業に成長を遂げたといっていいだろう。

  オンラインとオフラインの連動も、1919の大きな特徴の一つだ。オンラインはスマホのアプリを中心とし、オフラインを構成するのは中国全土1,900店ものリアル店舗網だ。

  各地の店舗は酒類を販売するだけでなく、ネットからの注文に応じる「前置倉庫」としての役割も担う。アプリで受けた注文は、すべて最寄りの店舗に振り分けられ(売上もその店舗に計上される)、「最短19分」で消費者の手元に配達される体制を整えている。

  受注件数でみると、すでに天猫(Tモール)と京東(JDドットコム)に次ぐ中国3位の酒類販売プラットフォームに成長。2018年にはアリババから20億元の戦略投資資金が注入され、酒類販売界の「新小売」ユニコーン企業として注目を集めている。

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