中国では、消費者やマーケティングの観察・分析をする際に、こうした解釈をベースに「中産層」とひとまとめにすることが多いが、今号では特に昨今の中国社会・経済の変化に相応した“新しい”価値観やライフスタイル、消費行動を取る「新中間層」にスポットライトを当てたい。
(※中国では、「中間層」は大気層の「中間圏」の意味となる。ここでいう中間層は「中産層」と表現されるが、以下、あえて「中間層」を用いる。)
大手コンサルティング会社のマッキンゼーは、レポート「2020年 中国消費者調査報告」で、中国国内の中間層(中レベル所得層)の数は3億人超と試算。その数は現在も増え続けており、2025年には5億人を超えて、都市部人口の半数以上を占めると予想。可処分所得は総額13.5兆元に達するとも見込んでいる。(図1:中国の中レベル所得層の規模の推移)
中間層のなかでも、より進歩的な消費観を持つ「新中間層」の規模も拡大し続けている。彼らの消費行動は、今後中国経済の発展に大きな影響を及ぼすと予想されている。
中国の「新中間層」とは?
独自でオープンな価値・消費観
中国経済の発展と社会の進化に伴い、中間層の定義にも変化が見られる。かつて中間層の定義といえば、資産や学歴、職業が主な基準だったが、「新」中間層の特徴は、その価値観にあるようだ。
著名な経済評論家である呉暁波の個人メディア(自媒体)「呉暁波頻道(チャンネル)」が発表したレポート「2019新中産白書」のほか、動画投稿アプリTikTokの運営元であるバイトダンス(字節跳動)傘下の広告プラットフォーム・巨量引擎(CQADO)が、広告企業の宏盟集団(Omnicom Media Group)と共同で公表したレポート「2020中国新中産消費及び媒介行為トレンド報告」で、「新中間層とは、個人年収10万元以上または世帯年収20万元以上で、大学かそれに準ずる学歴を有し、安定した生活基盤を備え、独自の価値観や積極的な生活態度、開放的な消費観を持つ層」と定義されている。
新中間層の特徴は、独自の審美眼を持ち、他人の言うことに左右されない。海外ブランドを盲目的に崇拝しない傾向があり、物質的に満たされていれば、時間やお金を自身の向上のために使いたいと考える。
また消費に占める「コト(体験)」消費やサービス消費の割合が大きい。モバイルネットワーク網を使いこなし、場所にとらわれない。同じ価値観、審美眼、消費観を持つ仲間を見つけて、コミュニティを形成することを好むとしている。
こうした新中間層のイメージに合致する人物像は、長く新一線・二線級都市に生活する人たちで、新中間層全体の65%を占める。若いZ世代も新中間層に加わりつつある。 職業別に見ると、起業家や企業の管理職、中間管理職が多い。学歴では大卒以上が5割を超える。また48%が既婚者で子持ちだ。(図2:新中間層の人物イメージ)