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中国「新中間層」調査分析レポート(1)
3億人の「新中間層」をいかに攻略するか ?
2021年6月22日
中国消費の新勢力として全土に広がる
3億人の「新中間層」をいかに攻略するか ?

  当会報誌では過去数回にわたり、中国消費の今後の主力となる1995年以降生まれの「Z世代」をレポートしてきた。今号では、もう1つの新興消費者層として注目を集める「新中産層(新中間層)」に着目する。

  世界最大規模の中産階級(中間)層人口を誇る中国。 中間層とは、社会成層の資本家階級(支配層)と労働者階級(被支配層)との中間に位置する階層のことを指す。

  マルクス主義は中間層を「旧中間層 (中小企業主、商人、自営農民などの伝統的生産手段所有者層) 」と「新中間層 (技術者、管理職など生産手段をもたない層)」とに分けるが、この場合の旧中間層を「中産階級」と呼ぶこともある。

  一方、生活水準や生活様式において中間の層とされる「中流階級」に対して、中間階級は支配=被支配の政治・社会関係における中間の層を意味する。
 中国では、消費者やマーケティングの観察・分析をする際に、こうした解釈をベースに「中産層」とひとまとめにすることが多いが、今号では特に昨今の中国社会・経済の変化に相応した“新しい”価値観やライフスタイル、消費行動を取る「新中間層」にスポットライトを当てたい。
(※中国では、「中間層」は大気層の「中間圏」の意味となる。ここでいう中間層は「中産層」と表現されるが、以下、あえて「中間層」を用いる。)

  大手コンサルティング会社のマッキンゼーは、レポート「2020年 中国消費者調査報告」で、中国国内の中間層(中レベル所得層)の数は3億人超と試算。その数は現在も増え続けており、2025年には5億人を超えて、都市部人口の半数以上を占めると予想。可処分所得は総額13.5兆元に達するとも見込んでいる。(図1:中国の中レベル所得層の規模の推移)

  中間層のなかでも、より進歩的な消費観を持つ「新中間層」の規模も拡大し続けている。彼らの消費行動は、今後中国経済の発展に大きな影響を及ぼすと予想されている。

中国の「新中間層」とは?
独自でオープンな価値・消費観

  中国経済の発展と社会の進化に伴い、中間層の定義にも変化が見られる。かつて中間層の定義といえば、資産や学歴、職業が主な基準だったが、「新」中間層の特徴は、その価値観にあるようだ。

  著名な経済評論家である呉暁波の個人メディア(自媒体)「呉暁波頻道(チャンネル)」が発表したレポート「2019新中産白書」のほか、動画投稿アプリTikTokの運営元であるバイトダンス(字節跳動)傘下の広告プラットフォーム・巨量引擎(CQADO)が、広告企業の宏盟集団(Omnicom Media Group)と共同で公表したレポート「2020中国新中産消費及び媒介行為トレンド報告」で、「新中間層とは、個人年収10万元以上または世帯年収20万元以上で、大学かそれに準ずる学歴を有し、安定した生活基盤を備え、独自の価値観や積極的な生活態度、開放的な消費観を持つ層」と定義されている。

  新中間層の特徴は、独自の審美眼を持ち、他人の言うことに左右されない。海外ブランドを盲目的に崇拝しない傾向があり、物質的に満たされていれば、時間やお金を自身の向上のために使いたいと考える。

  また消費に占める「コト(体験)」消費やサービス消費の割合が大きい。モバイルネットワーク網を使いこなし、場所にとらわれない。同じ価値観、審美眼、消費観を持つ仲間を見つけて、コミュニティを形成することを好むとしている。

  こうした新中間層のイメージに合致する人物像は、長く新一線・二線級都市に生活する人たちで、新中間層全体の65%を占める。若いZ世代も新中間層に加わりつつある。 職業別に見ると、起業家や企業の管理職、中間管理職が多い。学歴では大卒以上が5割を超える。また48%が既婚者で子持ちだ。(図2:新中間層の人物イメージ)
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