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中国事業展開のポイントをしっかりと見極めよう
独資・合弁・内資、それぞれのメリット
2012年3月7日

 北京で美容室を2店舗持つあるクライアントからご相談をいただき、先週北京に行ってきました。

 店舗が2つともそれぞれ別々の中国人投資家と合弁で開いたのですが、やはり、当事者間で意見の食い違いが生じているようです。まだ利益配分をどうすべきかのレベルには至ってないのですが、当初の家賃※1や内装費の分担、スタッフの給与、広告宣伝など、それぞれ当事者の思惑が絡み、日本人の責任者はこの調整に時間を奪われ頭を抱えています。

 そこで店舗の独資化も視野に入れたクライアントから、資本形態を変更するうえで独資、合弁、内資それぞれのメリットとデメリットはどうかと質問されましたので、以下簡単にまとめてみました。 まず独資ですが、メリットはもちろん会社資本が独自100%なので、すべて自分の資産になるほか、すべての運営が自分の思い通りにできることです。また事業が成功した際にはすべての利益を自分のものにできます。一方、デメリットは中国で外国の企業として運営するわけなので、各種リスクやトラブルの可能性があります。特に店舗の場合、税務局や公安、消防局などから色々と指摘を受ける可能性があります。また年に1回の監査報告や人事労務面でコストがかさみますし、業種によっては外資100%でそもそもできない規制事業もあります。

 次に合弁の場合、メリットはいくらか資本が入っているのである程度のコントローラビリティはあることです。あと地元のパートナーが事業を進めるうえで心強いという面もあります。一方、デメリットはやはり当事者間でもめたときで、100%自分の思い通りにできないのでストレスはたまるでしょう。

 最後に内資ですが、メリットは資本金も低くおさえることができ※2、設立登記などが簡易的に行える点でしょう。中国企業ということで税務面など当局からの監視が外資企業ほどは厳しくない場合もありますし、また何かあったときには株主である中国人(会社)が頼りになります。また教育、出版、医療など独資や合弁ではできない事業の場合、内資と提携するしかありません。一方、デメリットはやはり会社の所有者はあくまでも株主ですので、何かもめた際にいくら裁判で争っても勝ち目がないため、よほど信用できる中国人籍のパートナーが必要になります。

 幸い、クライアントは独資が禁止されている業種ではなかったため、今回の件については、事業が成功するにせよ失敗するにせよ、自分で納得のいく形やプロセスを取るためにも、設立時や運営面でハードルは高いかも知れませんが、外資100%でやるべきですとアドバイスしました。

 独資?合弁?内資?のいずれも正解はないのですが、上記のメリデリを踏まえて慎重に事業スキームを検討することが大切です。

※1:北京では店舗を賃貸する際、契約時に1年分を前払いするのが通例のようです。
※2:会社法では内資も外資も会社設立のための最低資本金は単独株主で10万元、複数株主で3万元となっていますが、外資企業の場合、設立申請時に当局に対して向こう5年間の事業計画書であるFS(フィージビリティスタディ)報告書を提出する必要があるため、一般的にこの最低資本金で
は当局に実務的に受け付けてもらえないという実情があります。

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