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進むEC業界再編、顧客増と取扱商品拡大へ
蘇寧が紅孩子を買収、ベビー用品事業を強化
2012年9月27日

 ラオックスを買収した家電量販大手の蘇寧電器が新たな買収に乗り出した。今度のターゲットは、子ども関連用品のECサイト「紅孩子」。B2Cサイトとしてはベビー・子供用品分野で最大手だ。業界ではこれをきっかけにさらに業界再編が進むと見られている。

 蘇寧は9月25日、6600万米ドルを投じて紅孩子を買収すると発表した。傘下ECサイトの蘇寧易購において、紅孩子が展開するベビー・子供用品の「紅孩子」、化粧品などが中心の「繽購」ブランド製品を販売する予定。リアルの一部店舗でも「紅孩子専区」という特別コーナーを設ける考えだ。

 紅孩子は2004年の設立。当初はカタログ販売からスタートし、05年以降6回にわたってベンチャーキャピタルなどから出資を受け、成長してきた。売上高は公表していないものの、同社の徐沛欣董事長の発言や各種報道によると、09年は20億元、10年は15億元だったとみられる。11年度については見方が分かれ、10億~15億元規模のもよう。蘇寧の買収公告によると、12年は10億~10.5億元の売り上げを見込んでいる。近年の成長鈍化については、競争激化とコスト増大が主因として挙げられよう。

 中国のベビー・子供用品のネット市場は12年上半期(1~6月)において約200億元規模だった。通年では前年比86%成長して610億元規模に達すると予想される。ネットショッピング市場全体の約4.3%に相当する。

 蘇寧の紅孩子買収のポイントと業界に与えるインパクトは、主に以下の3点にまとめられよう。

 まず、蘇寧にとっては顧客基盤が拡大するメリットがある。同社は家電量販店が母体のため、ECでの取扱商品も家電やデジタル製品が大半を占め、男性が顧客の中心だった。近年は書籍や雑貨などの分野にも進出してきたが、このたびベビー・子供用品や化粧品を取り扱うことにより婦人層への食い込みが期待できよう。

 また、取扱商品数の増加で規模のメリット拡大が進むだろう。蘇寧は12年売上高の200億元達成を目指しているが(ただ、12年6月中間期の売上高は52.8億元にとどまっている)、そのために商品数を150万SKU(最小在庫管理単位)まで拡大する必要性を感じている。その意味で、紅孩子の商品を取り入れることは後押し材料だ。女性向け商品とコラボした新商品の開発も視野に入る。

 EC業界全体にとっては、自社運営型からプラットフォーム型へのシフトがより強まりそうだ。さまざまな商品が購入できる「モール型サイト」が消費者の支持を受け、ワンストップサービスの優位性が高まっていくだろう。ただ、プラットフォーム型ECサイトの市場シェアは、タオバオ系の天猫が57.1%、京東商城が20.1%、騰訊B2Cが4.0%、蘇寧易購が3.8%の順(12年4~6月期)。各社が「打倒天猫」を掲げているものの、現実的にはこの牙城は簡単には崩せないだろう。

 この他にも、当然のことながら物流コスト削減などのメリットも考えられる。これを起爆剤にECサイトの買収・統合の動きがさらに進んでいくとみられる。

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